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Interview

テレビや街頭で見かける「Smarter Planet」のCMにはどんな意味があるの?(前編)

前編

最近、テレビや新聞、雑誌等で、日本IBMの一風変わった広告を頻繁に目にするようになってきた。具体的な商品やサービスを宣伝するわけでもなく、極めてシンプルなメッセージを語りかけるものだ。キーワードは「Smarter Planet」。IBMはいったい何をしようとしているのだろうか? 日本IBMでSmarter Planetのイニシアチブを統括する未来価値創造事業 執行役員 岩野和生氏に疑問をぶつけてみた。

ITで地球に「良い影響」を与えるための戦略「Smarter Planet」

編集部

ちょっと前に、テレビや街頭で「Smarter Planet」のCMをよく目にしたのですが、あれはどのような意図が込められたものだったのでしょうか? 例えば、訴求する製品が冷蔵庫なら主婦、サーバーならシステム管理者へ向けたメッセージだとわかる。でも、スマートな地球という提案はあまりにスケールが大きすぎるので、いったい誰に向けたメッセージなのか気になっていたのですが。

岩野氏

おっしゃるとおり、Smarter PlanetのCMはこれまでと違ってシステム管理者やエンジニア、あるいは経営層など特定の層に製品・サービスの宣伝を行う類のものではありません。むしろ、広く一般の人々に向けて、「ITを使って社会問題を共に解決していきましょう」という社会的なメッセージを発信するためのものなのです。

日本アイ・ビー・エム 未来価値創造事業 執行役員
岩野和生氏
日本アイ・ビー・エム 未来価値創造事業 執行役員 岩野和生氏
編集部

しかし、なぜIBMが社会的なメッセージを発信するのでしょうか?

岩野氏

2008年11月、世界を機能させているあらゆるシステムやプロセスのあり方が根本的に変わることを示唆した頃から、地球のスマート化に関する地球規模での対話が始まりました。対話を通じて私たちは多くのことを学び、また今共に行動を起こすときだと実感しました。

 

ITを牽引する立場として、私たちの社会が抱える問題に対してどのような解決策を見出すことができるのか。それをIBMは常に考えています。そして、人々と共に考え、議論し、行動するための具体的な提案としてIBMが打ち出したのが「Smarter Planet」なのです。

編集部

なるほど。では、あのメッセージはテレビや電車、街角でCMを目にした全ての人に向かって発信されていると理解して良いのですね。例えば、大企業の経営者や行政機関、政治家といった特定の層に向けたものではない。

岩野氏

そのとおりです。後ほどお話しますが、社会問題の解決を目指すSmarter Planetの取り組みには多くの人々のコンセンサスが必要になります。それは、ごく一握りの決済権者さえ納得すれば済むという世界では決してありません。

編集部

なるほど。もちろん、ビジネスに関連する部分もあるとは思いますが、必ずしもそれだけではなくIT業界のリーダーとしての矜持がなさしめている面もあるのですね。ここであらためて、そのコンセプトを簡単に教えていただけますか?

岩野氏

すでに述べましたようにSmarter Planetとは社会に対するITからの提案です。都市問題、人口増加、貧困など世界はさまざまな問題を抱えています。それは、既存のシステムやプロセスでは上手く解決できない問題と言い換えることもできるかもしれません。しかし、ITが持つ技術やノウハウを活用することにより、状況を変えることができるかもしれないのです。

編集部

ITが持つ技術やノウハウを社会に適用する。

岩野氏

例えば、問題解決のアプローチなどはITの得意分野ですよね。どのような分野の問題であれ、それを解決するためには情報を把握して(把握)、それらを集め(集結)、分析して理解する(知性)という手順を踏みますよね。このようなアプローチにITは実にうまくマッチするのです。例えば、環境問題なら、実際の被害状況を調査し、収集したデータから原因や対策などを導き出すでしょう。一連のプロセスはシステムの運用管理のサイクルと同じです。

問題解決のプロセス
問題解決のプロセス
編集部

理念としてはわかるのですが、物理社会の情報をデジタルと同じように扱うことは可能なのでしょうか?

岩野氏

環境は急速に整ってきていますよ。例えば、全世界合計で約300億のRFIDタグや10億台以上のカメラ内蔵携帯電話など、物理世界を「把握」するためのデバイスは生活の隅々まで普及しています。また、約1兆個のデバイスと20億人がアクセスするインターネットや40億台を支える携帯電話通信網は、情報を「集結」するためインフラとなりえます。

 

IBMは2011年に20ペタフロップスの処理能力を持つスーパーコンピューターを米国ローレンスリバモア研究所に納入する予定ですが、これは物理世界を処理するために必要なITの「能力(知性)」が指数関数的に進歩していることを表しているといえるでしょう。

 

人、モノ、カネ、ソフトウェア、センサー、情報など、世の中のありとあらゆるものがネットワークで接続され、それらの状況をリアルタイムに把握、集結、解釈することが可能になる。また、得られた知見をもとに、設備やシステムを制御することで物理世界に働きかけることもできます。

 

つまり、ITを介したエコシステム(生態系)が構成できるわけです。Smarter Planetが最終的に意図するのは、エコシステムを通じて世界に「良い影響」を与えること。いよいよ、「社会生態系」や「ビジネス生態系」といった言葉を使って、人やモノやあらゆるもの同士の関係をきちんと認識して、互いにどういう連鎖を持っているかをとらえられる時代が来ているのです。

(次ページへ続く)

 

 

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物理世界とデジタル世界が融合した「森羅万象の動的ネットワーク」

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この記事の著者

吉村 哲樹(ヨシムラ テツキ)

早稲田大学政治経済学部卒業後、メーカー系システムインテグレーターにてソフトウェア開発に従事。その後、外資系ソフトウェアベンダーでコンサルタント、IT系Webメディアで編集者を務めた後、現在はフリーライターとして活動中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://enterprisezine.jp/article/detail/2586 2010/11/12 17:00

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