「クラウド的ユーザー体験」はチャンスであり、脅威でもある
「クラウドがもたらす影響を対企業ITだけで考えていると、思わぬ脅威にさらされる危険がある」と日立製作所の稲場淳二氏は警鐘を鳴らす。
クラウドによりITインフラの柔軟性が増した結果、最近のユーザーは、以前ほどECサイトのダウンを経験していない。またパブリック・クラウドのサービスにより、PCでの作業はアプリケーションを用意することなくどこからでも可能になった。つまり「システムの都合」を意識することなく、やりたいことに集中できるようになってきており、それを稲場氏は「クラウド的ユーザー体験」と呼ぶ。一方、同様な「体験」を提供できない企業は、競争上不利になる。
また、クラウドにより個人ユーザーの能率が上がっている一方、企業内ユーザーの生産性も同様に効率が向上しているとは限らない。逆に言えば、他社に先駆けて上げることができれば優位に立てる。
では、「クラウド的ユーザー体験」を提供するための技術要件は何か。稲場氏がカギになる、と見ているのが仮想化だ。特性が異なる機器、サーバー、ストレージ、ネットワークを集約し、抽象化して、物理的な構成に制約されない柔軟な割り当て、再配分を可能にする。