おそばやさんの看板はときどきすごくCAPTCHAっぽいです
「認証してほしい! ワシを認証してほしい!」
暖簾の下ろされた居酒屋の入り口に立って
涙声で叫んでいた、あのスーツ姿の初老の男性には
いったいどんな事情があったのだろう……
後ろ髪をひかれる思いで本題に入らせていただきますが、
皆様の手書きの文字は、ちゃんと読めますか?
「上司の字がぐっちゃぐちゃで読めないので
毎日チューリングテストを受けている気分です」
「部下の字がぐっちゃぐちゃで読めないので
わたしは神に試されているのだと思います」
ご存じのように、ワープロの普及からこのかた、
人類の手書き文字は汚くなる一方です。
字が汚いのは自分だけなのではないか、という
不安がどんどん募ってきましたが、
そんなことはないはず……きっと……人類普遍の……
じつは、CAPTCHA認証を開発したエンジニアも、
上司のひどい悪筆にいつも悩まされていたんだそうです。
その上司の筆跡を解析して、その結果をもとに
例の文字をゆがめるアルゴリズムを開発したのだといいます。
(伝聞調で書いてみましたが、まったくの想像です)
そのようにして出来あがったCAPTCHA認証システムは
世界中で爆発的に普及しましたが、開発者は
ひとり釈然としない顔をしていました。
あんなひどい字は読めなくて当然、と主張したかったのに
逆に、これを読めねば人にあらず! というシステムを
うっかり作ってしまったわけで、
目的と結果がずれてしまうのは世の常とはいえ
なんという皮肉な結果でしょう。
ちなみに、上司の方はそのCAPTCHA文字をまったく判読
できなかったため、開発者の方は何度もアルゴリズムの
見直しを余儀なくされたといいます。
(伝聞調で書いてみましたが、まったくの想像です)
そしていま、僕の想像のなかで、冒頭の初老の男性が
ようやく認証されて入店することができました! よかった!
思ったとおり、声紋認証でした。