データセンター(または人生)で遭難しないために!
データセンターの寒さを知った者は、
その分だけ、人より暖かい心を持つことができる。
そんな架空のことわざの妥当性はともかく、
ひとつだけはっきりしていることがあります。
そう、データセンターは、寒い。
ダースベーダーが黒いのと同じくらい、
データセンターが寒いのはIT業界の常識です。
キンキンに冷えたデータセンターは、
キンキンに冷えたビールサーバーと同様に
人々に笑顔をもたらす一方で
深刻な身体的ダメージを与えることがあります。
デジタルデータは要冷蔵!
圧縮データは要解凍!
漏洩データは要追跡で
ダータのシーメには要注意!(現在、若干空腹です)
データセンターはよく冷蔵庫にたとえられますが、
むしろ永久凍土にたとえるべきなのでは
ないかと個人的には思っています。
凍りついたマンモスが眠るシベリアの凍土のように、
極寒のデータセンターの奥底には、誰も知らない
太古のデータたちがひそかに眠り続けているからです。
そこには、たとえば数テラバイトにものぼる
街頭アンケートの生データがあります。
数十年にわたって密かに全国で実施されてきた飼い犬への
アンケートで、回答はすべて44.1KHz のWAVファイルです。
書籍の電子化作業中に興の乗った作業員の仕業か、
般若心経をびっしりと書き込んだ顔面の高解像度スキャンが
何千枚も保存されています。
手打ちで入力された小数点以下100万桁の円周率、しかも
テンキーが壊れていたせいで3がまったく入力されず
歯抜けになってしまったという無用の文字列があります。
消すにしのびなく、入力者が残しておいたものでしょう。
もはや顧みられることのないそれらのデータは、
記憶媒体を乗り継ぎながら宇宙の終焉まで
続くであろう、長い長い旅の入り口に立っているのです。
とはいえ、これらのデータセンターも
年々数が少なくなっていると言われています。
有名な「代々木データセンター」も
2007年に惜しまれつつ閉館となり、
いまは殺風景な立体駐車場になってしまいました。
都内から銭湯が消えるのが早いか、データセンターが
消えるのが早いか。答えは言うまでもないでしょう。
たまには銭湯のことも思い出してあげてほしい。
高い煙突を見上げて、そう思いました。