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#055 アレ、オレ……? ほら、あそこに立ってる……半透明の…


アレ、オレ……? ほら、あそこに立ってる……半透明の…


「わたしがやりました」

その自白、誰も待ってない!
あまつさえ、うその供述!

それはつまりアレオレ詐欺というもので、
「ワシが育てた」「オレがやった」「私が発見しました」と、
そよ風ほどにも関与していない案件へのかかわりを
大胆にカジュアルに主張して他人の手柄をかるく横取り、
なんという卑怯! なんかすごく怠惰!

成功したプロジェクトには、どうしても
たくさんの偽の育ての親がまとわりついて
逆カッコウとでもいうべき様相を呈して
しまいがちなものですが、このちょっとした犯罪は
けっして歴史の浅いものではありません。
たとえば、アメリカ大陸の発見後に、
コロンブスの船団の乗組員だったと主張していた
人間の数は、きっとヨーロッパのすべての船乗りの
数を合わせたよりも多かったでしょう。
これはつまり、そもそも船に乗る職業じゃない
人間までもがアレオレを主張していたということで、
だいたい手を動かさない人間ほどあれこれ
能書きだけはたれるものですから、
そもそも喋るものを信用してはいけない、
吠えたり鳴いたりするのもダメ、
おまえは草木だけを信じて生きていきなさいと
自分の子供には教えようと思っているのですが
だいぶ話がそれました。

さて、アレオレ詐欺をやらかす人は、
大きく何種類かに分類することができると思います。
「始めた」派、「育てた」派、「拾った」派、それからこれは
きわめて少数ですが、「つぶした」派というのもありますね。

「始めた」派は、プロジェクトの開始時のメンバーだったとか、
成功している会社の創立メンバーだったとか、そういった事を
主張したいタイプのアレオレさんたちです。
開始時のメンバーだったが無能な上司に途中で外された、
などというエクスキューズが加わることもあります。
飽きっぽくて性急、誇りをもってアーリーアダプターを自認し、
新しいデジタルデバイスはすぐに手に入れて周囲に開陳するも
その後使いこなしている様子はなく、MacBook AirとiPadの
どちらもうっかり尻の下に敷いて破壊してしまったという
武勇伝が語り継がれています。
(とくにモデルがいるわけではありません)

「育てた」派は、たぶん最も多いタイプのアレオレでしょう。
プロジェクトよりも人物についてそう主張することが多く、
父性的かつ権力志向の持ち主であることが多く、
育て上手と自称しつつも鉢植えを枯らすことが多く、
ふたりの息子と3匹の飼い犬がいますが、
すべて野生化し、山に消えたと噂されています。
(こちらも、特にモデルがいるわけではありません)

「拾った」派は、失敗しかけたけれどその後もちなおした
プロジェクトについて、その救済に自分の功績があったと
主張するのが好きなタイプです。
このなかではいちばんナルシストで、
「やっぱりオレがいなくちゃダメなんだよなあ」が口癖で、
デスマーチ的な状況で助っ人として投入されると
特に意味のある働きはせず右往左往しますが、
その表情はとてもいきいきとしています。
(しつこいようですが、特にモデルがいるわけではありません)

「つぶした」派は、このなかでは少数派とはいえ、
どの部署にも一人はいる、どなたも御存じのキャラクターです。
つぶしたプロジェクトの数を誇るタイプで、
部下の陳情を、いかにネガティブな指摘の絨毯爆撃をあびせて
退けたか、酒の席で自慢げに語ります。
戦車の前に身を投げ出して軍隊の侵攻を阻止した勇士に
自分をなぞらえることがありますが、
先日、社内で宅急便の荷物カートに轢かれたので今びっこをひいています。
(ですから、モデルはいません)(ほんとにないです)
(ぜんぶ創作です)

以上のように想像だけで書きだしてみて、人間というものの
業の深さにあらためておののいています。
人類が滅亡するその時まで、アレオレ詐欺がなくなることはないのでしょう。
滅亡そのものについて、「アレはオレがやった」と主張するものが
どのくらい現われるのか、それはいったいどういう存在なのか、
それについてこれからじっくりと考えてゆきたいと思います。
 

 

 

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この記事の著者

倉田 タカシ(クラタ タカシ)

「ネタもコードも書く絵描き」として、イラストレーション、マンガ、文筆業、ウェブ制作、Adobe Illustratorの自動処理スクリプト作成など、多方面で活動。
イラストの他に読み札も手がけた「セキュリティいろはかるた」はSEショップより発売中。
河出文庫「NOVA2-書き下ろし日本SFコレクション」...

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