日本国内のグローバル企業とITガバナンス
国内グローバル企業は、日・米・欧の企業統治に対する考え方やマネジメント・スタイルの違いを踏まえて、理想と現実のバランスを考慮し、全体最適と差異化を両立するITガバナンスを構築しなければならない。
大手製造業をはじめ、多くの国内企業にとってグローバル・ビジネスの展開は重要な企業戦略のひとつとなっている。
アジアなどの新興国に低廉な労働力を求めて工場を設置するといった取り組みにとどまらず、グローバルな市場での販売に向けた現地法人の設置、海外パートナーとの協業や合弁企業の設立など、その目的や形態は多様である。ビジネスのグローバル化に対応するためには、国境を越えた業務連携や情報共有が必要となり、情報システムにも大きな任務が課せられることとなる。
IT部門とグローバル
一方で、本社や国内グループ企業のみをサポートの対象としてきたIT部門にとって、グローバルな視野でITマネジメントやアーキテクチャを展開していくことは容易なことではない。
頻繁に聞かれる課題としては、「欧米の方がITの活用が進んでおり、日本の本社IT部門がリーダーシップを発揮することが難しい」「各拠点ですでに個別の情報システムが稼動しており、後から標準化することは不可能に近い」「それぞれの地域で異なるビジネス要件や法令があるため、制度やルールを統一できない」といったことがあげられる。
グローバル展開の際に限らず、グループ企業のシナジーを最大化していくために共通化や標準化を進めることと、個別事業の差別化や迅速性を確保することの間にはトレードオフの関係が成り立っており、その両立は簡単に実現できるものではない。
共通化や標準化を推し進めればグループITガバナンスが強まり、ノウハウが共有され投資効率も高まる一方で、個別の事業ニーズへの迅速な対応や固有性による差別化や競争優位性を妨げることになりうるというジレンマが常に存在する。