統一したルールの下、同一のシステムを全世界で利用し、ローカルの自由度を一切許容しないという集権型のガバナンスモデルは、最も単純でコスト効率が高いアプローチといえるだろう。今回は、各国におけるITガバナンスへのスタンスの違いを比較してみる。
集権型の米国
米国のグローバル企業は集権型の形態を好む傾向にある。
トップダウンのマネジメントが主流であり、経済合理性を最重要視し、とりわけITの分野において“America as No.1”という意識が強い米国系企業は、米国発のベスト・プラクティス(と信じている方法)を全世界の拠点に浸透させることでグループを統治する方法を採る。
同一のERPの全世界展開、シングル・インスタンスのデータベースの活用、データセンターの集約などの取り組みが米国系企業において最も顕著である。米国系企業には、コア・コンピタンスを明確にした単一事業を展開する企業が比較的多いこともこうした集権型のガバナンスを後押ししている。
個別性を重んじる欧州
一方、欧州は元々個別の文化や言語をもった複数の国々から構成されていることから米国と異なる特徴が見られる。
経済統一は進みつつあるものの、個別性を許容する姿勢をもつ点と、米国に比べてコングロマリッドが多い傾向にある点では日本に近いグループ形態といえる。
欧州のグローバル企業のガバナンスは、スタンダード駆動型と呼べるのではないだろうか。メートル法にはじまり、IT業界におけるBS7799やITILなどへの取り組みからもスタンダードを重んじる傾向にあることが理解できよう。
地域や国の違いを許容しつつも、スタンダードという最低ラインで足並みを揃えようとするガバナンスモデルが欧州流といえる。
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内山 悟志()
株式会社アイ・ティ・アール 代表取締役 プリンシパル・アナリスト 大手外資系企業の情報システム部門などを経て、1989年にデータクエスト・ジャパン株式会社に入社し、IT分野におけるシニア・アナリストを務める。1994年、情報技術研究所を設立し、(現:㈱アイ・ティ・アール)代表取締役に就任。同分野では...
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