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Interview

2011年、淘汰の時代を迎える国内パブリック・クラウド

国内クラウドサービス市場 2010年の実績と2011年~2015年の予測


IDCの調査レポートによれば、2010年のパブリック・クラウド市場は454億円(前年比45%増)。今後も堅調な伸びが見込まれる同市場だが、新規参入に関しては2011年がタイムリミットになるという。国内のパブリック・クラウド市場の現状と今後の見通しについて、同レポートをまとめた松本聡氏に話を聞いた。

Force.com、Google App Engine、Windows Azure―ようやく立ちあがったPaaS市場

IDC Japan IT サービス リサーチマネージャー 松本聡氏
IDC Japan IT サービス リサーチマネージャー
松本聡氏

-まずは、先日発表されたレポート「国内クラウドサービス市場 2010年の実績と2011年~2015年の予測」の概要についてご教示ください。

 今回のレポートは、国内のパブリック・クラウドの市場規模と予測の算出を目的としたものです。主に、「事業者へのインタビュー」「年に数回実施するユーザー調査」「個別のユーザーインタビュー」を通して、市場規模の変動をまとめました。

 結論から言うと、2010年の実績は、SaaS(※1)、PaaS、IaaS合計で前年比45%増の454億円という結果となりました。特に目立ったのはPaaSの成長です。約3年前からクラウド市場が始まって以来、SaaSが市場を牽引してきましたが、昨年からIaaSやPaaSの分野が大きく成長しています。特にPaaSは2010年で前年比85%増。市場の規模自体は104億円とまだ小さいものの、今後も高い成長が見込まれます。

-PaaSが特に伸びた要因は何でしょうか?

 2010年になって、ようやく市場らしきものが形成されたと言った方が正確かもしれません。これまではセールスフォース・ドットコムのForce.com以外は目立ったサービスが存在していませんでしたが、マイクロソフトのWindows Azureが登場し、グーグルのGoogle App Engineもブラッシュアップが進んだことで、PaaSという括りで売上が立つようになったというイメージです。

ソーシャル・アプリケーションと蜜月の関係を築くIaaS

-PaaS以外に注目すべき変化などはありますか?

 弊社では年に数回、市場規模予測を出しているのですが、2010年については夏に大きく予測を上方修正しました。mixiアプリやGREEアプリといったソーシャル・アプリケーション分野が思いのほか成長し、そのインフラとしてIaaSを選択するケースが予想以上に多かったことが主な理由です。

 mixiアプリのオープン化などにより、この分野の成長は予測していましたが、まさか1年間でこれほど伸びるとは思いませんでした。しかも、インフラにはホスティングが使われると想像していましたが、実際にはIaaSを採用するケースが多かった。月額貸しのホスティングから従量制のIaaSへと選択が移ってきているようで、Amazon、Googleや、ソーシャル・アプリケーション向けに力を入れるGMOやニフティなどが利用者数を伸ばしています。

-シフトの原因はどのようなものでしょうか?

 やはり、スピードとスケーラビリティですね。通常のホスティングの場合、インフラの拡張にどうしても数日~2週間程度かかってしまいますが、IaaSならば数時間で対応できます。リソースの縮小についても同様です。契約の単位と拡張・縮小のスピードで優れた IaaSが支持を伸ばしていると言えそうです。

-ソーシャル・アプリケーションケーションの要件とIaaSの特性が合致していたということですね

 非常に合致していますね。ある意味、ソーシャル・アプリケーションがこれほど伸びたのはクラウドがあったからだとも言えます。この分野は、比較的小規模の事業者が多いので、インフラに対する初期投資も限定的にならざるを得ない。AmazonなどのIaaSは、最初は小さく始めておいて、ユーザー数の増加に合わせて拡張できるので、ビジネスモデルに非常に合致しています。IaaSとソーシャル・アプリケーションは相互的に影響し、発展しているのではないでしょうか。

企業システムに浸透し始めたコラボレーティブ・アプリケーション

-PaaS、IaaSとお話を伺ってきましたが、SaaSについては特筆すべき変化などは見られましたか?

 基本的には当初の想定通り、堅調に成長しています。ただ、メールやグループウェアなどのコラボレーティブ・アプリケーションは、思ったよりも伸びています。例えば、MicrosoftのBPOSやExchange Online、IBMのLotusLive、Google Appsなどがそれに当たります。

-どのような背景があるのでしょうか?

 牽引材料の一つは中小企業です。彼らはメールやグループウェアをインターネット・サービス・プロバイダー(ISP)にホスティングしているところが多かった。つまり、もともと自社で持っていなかったのですね。外部にデータを置くことに対して抵抗感の少ない企業にとって、前述のようなクラウド型サービスは、コスト削減と情報活用を比較的手軽に実現できる魅力的な選択肢であることは間違いありません。

 一方、大企業の事例も徐々に出てきています。LotusにしてもExchangeにしてもこの分野のシステムは技術的には枯れていて、なおかつ、保守にそれなりに手間がかかるという特徴があります。例えば、添付ファイルによってメールに必要なストレージ容量はどんどん増えていく。可能であれば外部に出したいという判断になるのは自然の成り行きでしょう。これまで心配だったセキュリティのような懸念材料についても、どうやら問題なさそうだということも分かってきた。社内システムから外部に切り出すことも容易ですから、クラウドへの移行は今後も堅調に進むでしょう。

※1

 IDCでは、SaaSのうちアプリケーションに特化したサービスをAaaS(Application as a Service)と定義している。

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2011年の注目株は「業界特化型クラウド」

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この記事の著者

緒方 啓吾(編集部)(オガタ ケイゴ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://enterprisezine.jp/article/detail/3049 2011/04/19 14:23

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