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3.11以降の企業とITのあり方を問う(前編)

第12回


3月11日という日付、あるいは3.11というキーワードは、今後しばらく日本の社会やビジネスを考えるに際して、折に触れて出てくる単語になることは間違いないだろう。東北を中心として起こった地震と津波の被害、引き続いて連鎖的に起きた原子力発電所でのトラブルとその余波は、日本の社会や経済、あるいはその「あり方」そのものをいまだに揺るがしている。

3.11以降の主要企業の動き

 3月11日という日付、あるいは3.11というキーワードは、今後しばらく日本の社会やビジネスを考えるに際して、折に触れて出てくる単語になることは間違いないだろう。東北を中心として起こった地震と津波の被害、引き続いて連鎖的に起きた原子力発電所でのトラブルとその余波は、日本の社会や経済、あるいはその「あり方」そのものをいまだに揺るがしている。

 震災全体をどう捉えるかというのは、これから各所で議論が重ねられ、復興をいかに進めるかという話と合わせて動いていくことだろう。本連載では、こうした全体論を語る場としては相応しくないため、企業とIT周りの部分にフォーカスして状況の整理を試みたい。

 まず、IT目線で3.11以降の主要企業の動きを見ていると、出てくる大きなキーワードはいくつかに分けられる。ひとつは、いうまでもなくBCP(事業継続計画)であり、企業においてどの程度の備えだったのか、実際どの程度の対応ができたのかといった情報が表にも出てくるようになってきている。

 その他、東北各地で切れてしまったサプライチェーンをどのようにするか、関東圏でも物資の調達・流通や街中での販売といった、日常であればごく当たり前になされていたことをいかに確保するかといった、事業継続とは異なる緊急対応体制が敷かれていた。

 震災発生後の2週間は、メディアから出てくる情報に右往左往するかの形で、米がなくなり、牛乳がなくなった。米やティッシュなど一時期店舗から干上がっていたものは落ち着いてきたものの、水はいまだに買うにもなかなか買えず、購入制限を付けて販売するとの状況が続いている。

 フェーズで区切ると、3.11から数日は緊急対応の真っ最中であり、企業でも従業員の安否確認や、主要取引先の大枠の状況把握といった、日常業務ではない危機管理体制のモードにあった。会社によって差はあるものの、72時間と言われる緊急対応の初期期間の標準となる時期(これは被災地を中心とした救助と生存見込みの初期のタイムリミットでもある)を超えると、麻痺した交通網や見えぬ余震リスクを踏まえ、社員の一部を自宅待機させるなどの体制に移行した会社も少なくない。

 その他、外資系に多かったが、一時的にオフィスを閉めての全面撤退や、関西以西への一時退避など、相当レベルで「身構えた」状態が維持されていたが、発生後2週間から一カ月の間で、徐々に各所での都市機能が回復し、メディアもACの広告を見る頻度が落ちるなど通常モードに戻していくところで、2か月が過ぎ今日に至ることとなる。

もちろん、被災地の様子としては、復興という言葉を出すにもまだ早い、危機対応状況が続いている。しかし、良し悪しは別として、「企業はいかに業務を回していくか」といういつも通りに戻ることを目指してスイッチを切り替え始めている。

 自宅待機という声も、部品不足で工場が止まってしまったというケースを除き、危機対応体制的な意味合いでは身の回りでほぼ聞かれることはなくなっている。 企業と生産活動は、いかにして力強く業務を回していくかという頭に切り替わってきていると言ってよい。これが、やや関東圏を軸とした視点での現状の様子だと整理できる。(次ページへ続く

次のページ
3.11以降、企業活動のあり方は変わるのか?

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この記事の著者

渡辺聡(ワタナベ サトシ)

神戸大学法学部(行政学・法社会学専攻)卒。NECソフトを経てインターネットビジネスの世界へ。独立後、個人事務所を設立を経て、08年にクロサカタツヤ氏と共同で株式会社企(くわだて)を設立。現同社代表取締役。大手事業会社からインターネット企業までの事業戦略、経営の立て直し、テクノロジー課題の解決、マーケティング全般の見直しなど幅広くコンサルティングサービスを提供している。主な著書・監修に『マーケティング2...

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