2011年4月、JPNICにおいてIPv4アドレスの通常割り振りが終了した。この"IPv4枯渇"という動かしようのない事実を受けて、ようやくインターネットの世界はIPv6対応に向けて重い腰を上げ始めた。だが、現状ではほとんどのユーザはIPv4で接続しており、この状況はまだ当面続くと見られている。つまり世界が"IPv6オンリー"を受け入れるようになるまでは、少なくともあと数年は必要ということになる。
そしてIPv4アドレス枯渇で最も深刻な影響を受けるプレイヤーが、ISP事業者やデータセンター事業者など、IPアドレスを重要な商売道具にしている接続事業者だ。IPv4枯渇後、彼らはどのような対策を図ろうとしているのか。9月15日に東京・品川で行われた「Move Innovation A10 Forum2011 - IPv4枯渇対策/IPv6移行セミナー」(主催: A10ネットワークス)において、さくらインターネット さくらインターネット研究所 上級研究員 大久保修一氏が話した基調講演の概要を紹介したい。
IPv4アドレス確保の重要性
なぜさくらインターネットのようなデータセンター事業者にとって、IPv4アドレス枯渇は死活問題なのか。大久保氏は「IPv6しか接続できないサービスはほとんど売れない。現状のユーザはほとんどIPv4ユーザ。インターネットが完全にIPv6に移行するまで、IPv4のサポートは必要」と現状を説明する。つまり事業を拡大/継続していくためには、データセンター事業者はIPv4アドレスが枯渇した後でも、何らかの手段をもってIPv4を確保し続けなくてはならないのだ。
IPv4アドレスは、IANA(ICAN)→APNIC→JPNIC→指定事業者といった流れで割り振られてきた。IANAの在庫が尽きたのが2011年2月3日、そしてJPNICの在庫も4月15日にはなくなっている。上からの支給ルートが完全に絶たれた現在、事業者らは横のルートでIPv4アドレスの供給を確保しようとしている。
「IPv4アドレス確保の手段としては、IPアドレスの移転、既存セグメントからの回収、バックボーンからの回収、フレッツプールアドレスからの回収、ISPからの割り当て、IPv4アドレスをもっている企業の買収などが挙げられるが、当社ではIPアドレスの移転、つまり他の組織から購入するという方法を取ることにしている」と大久保氏。JPNICは上位組織であるIANAの流れを受けて、8月1日からIPv4アドレスを保有する事業者どうしの合意のみでアドレス譲渡を行うことを許可しており、JPNICで移転申請を受け付けている。さくらインターネットはこの新制度を利用して、IPv4アドレスの確保を進めていく方針だ。