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存在感を増すオープンソース高可用性(HA)クラスタ/LINBITと総代理店契約を締結したサードウェアにLinux-HAの現状を聞く

近年、障害時のデータ保護やサービス継続の観点から、冗長性を備えた高可用性クラスタがさまざまな方面で注目されている。一方で、コストダウンもまた重要な観点であり、結果的にオープンソースソフトウェアでHAクラスタを実現する「Linux-HA」への関心が高まっている。この10月4日にオーストリアLINBIT社と「Linux-HAサポート」における国内総代理店契約を締結した株式会社サードウェアの久保元治代表取締役社長と大塚和彦営業部マネージャーに、Linux-HAの現状を聞いた。

Linux-HAを構成するソフトウェア

 ひとくちに「Linux-HA」といっても、そういった名称の単一のソフトウェアが存在するわけではない。LINBIT社(およびサードウェア)が提供する「Linux-HAサポート」では、クラスタソフトウェアとしてHeartbeatとPacemaker、レプリケーションソフトウェアとしてDRBD、この3種のソフトウェアで構成される。

Heartbeat クラスタの基盤を提供するソフトウェア。クラスタを構成するノード(コンピュータ)間でハートビート信号を定期的に送受信し、ノードの状態を把握・管理する。2008年にPacemakerが分離後、現在の3.0系はLINBITがメンテナンスしている。
Pacemaker クラスタ上で動作するリソース(サービス、IPアドレス、データへのアクセスなど)を制御するソフトウェア。もともとはHeartbeatのCRM(Cluster Resource Manager)部分を、メンテナのAndrew Beekhof(アンドリュー・ビーコフ)氏が分離独立させたプロジェクト。クラスタ基盤としてHeartbeatのほかcorosyncもサポートする。なお、現行ロゴは日本のLinux-HA Japanプロジェクトによるもの。
DRBD Linuxカーネルモジュールで動作する分散複製型ブロックデバイス(Distributed Replicated Block Device)。データをリアルタイムでセカンダリノードにレプリケートし、あたかもネットワーク越しのRAID 1のように動作する。クラスタシステムとしてはHeartbeatなどの管理ソフトウェアと共に使用する。ブロックデバイスのため、XenやKVMといった仮想化技術とも組み合わせることができる。LINBITオリジナルのオープンソースソフトウェア製品で、DRBDのチーフ開発者であるPhilipp Reisner(フィリップ・ライスナ )はLINBITの共同CEOでCTOも兼任している。

 例えば、Heartbeat+Pacemakerによるシンプルな2ノードのクラスタは下の図のように構成できる。データは共有ディスクを利用せず、DRBDがそれぞれのHDDをネットワーク越しであたかもRAID 1のようにリアルタイムでミラーリングする。比較的小規模なシステムならこの構成が単一障害点を持たないので原理的に優位であり、初期コストも抑えられる。

 クラスタは信頼性が問われるシステムのため、従来は商用システムが有利だった。一方でHeartbeatもすでに10年以上の歴史があり、DRBDも20万ダウンロードの稼働実績がある。さらにOSSのためローコストで実現できることから、サービスの継続性やデータ保護のためクラスタの導入を検討しはじめた企業が目を向けはじめている。

株式会社サードウェア 代表取締役社長 久保元治氏
株式会社サードウェア
代表取締役社長
久保元治氏

 久保氏は次のように語る。「ストレージも必要でソフトウェアのライセンスを買わなければいけないとなると、安く見積もっても一式で5百万から1千万というコスト感になる。そこまでのコストはかけられないということで、諦めていた用途がたくさん眠っています」。

 「今までならシングルサーバーでバックアップさえ取れていればよかったシステムでも、去年あたりから障害時にもサービスを継続していこうという動きがかなり高まっています。仮想サーバにすることで台数が増えるため、商用製品ではコストが肥大化してしまうという相談をいただくこともあります」(大塚氏)。

 また、3月に震災があったことで、データ保護と災害対策の機運が高まったこともある。6月3日に開催されたLinux-HA Japan第2回勉強会では、DRBD proxyを利用した遠隔地レプリケーションなど「Linux-HAとディザスタリカバリ」について、サードウェアのエンジニアの岩崎のぼる氏がトークしている。

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毛利勝久(モウリカツヒサ)

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