深い協業関係から生まれたSystemwalkerとEM連携の新たな価値
Oracle Databaseの管理ツールとして生まれたOracle Enterprise Manager(EM)は、いまやデータベースだけにとどまらず、アプリケーションサーバーなどのミドルウェア群、さらにはOracle Exadata Database Machineなどのハードウェア、Oracle VMの仮想化環境なども管理できるOracle製品全般を統合管理するツールへと進化している。
一方で、さまざまなベンダーも統合的なシステム管理ツールを提供している。富士通のSystemwalkerも、こうした製品の1つであり、国内を中心に数多くの実績を持っている。SystemwalkerとEMは、同じようにシステムを管理するツールだが、これら2つにはどのような違いがあるのだろうか。
「2つの製品は競合するというよりは、連携させて使うことで、より価値を高めるものだと考えています」と語るのは、日本オラクル アライアンス統括 ソフトウェア・アライアンス営業統括本部 第一営業本部 富士通営業部 部長の横尾明久氏。Oracle Exadata Database Machineを導入した顧客においてSystemwalkerとEMを連携した監視を行っている事例など、すでに多くの顧客で連携が行われているという。
横尾氏によれば、どちらか1つを選ぶのではなく、これら2つのツールを連携させ活用している例がすでにたくさんあると言う。実際、2009年にはSystemwalkerとEMの連携に関する協業発表も両社により行われている。
「データベースの中の動作を深く見て、チューニングや監視を行う部分はEMで、それを含むシステム環境全体の管理はSystemwalkerでというように、棲み分けて利用されています」(横尾氏)。
古くから富士通とOracleは、データベースの領域で深い協業関係にある。富士通 計画本部 ビジネス企画室 オラクルミドルウェア技術部 マネージャーの松石航也氏によれば、「両社は1989年からパートナーシップを結んでおり、2006年に設立されたOracle GRID Centerでは共同でデータベースの新機能を中心に技術検証をいち早く開始している」という。 さらに、OracleがSunを買収したことで、SPARCプロセッサの開発を共同で行うなど、さらに深い2社の協業関係が築かれているのだ。
また、Oracle Exadataの導入にも富士通は積極的だ。その結果、Oracleのパートナーアワードである”Exadata of The Year”も2年連続で獲得している。当然ながら、Database of The Yearも併せて獲得しており、Oracleにとっては名実ともにNo1のパートナー企業と言っても過言ではない。
そのような協業関係の中で、EMについてもデータベースとともに、早い段階から富士通による顧客への導入が進んでいる。Oracle Database 10gからEMの自動チューニング機能が充実したこともあり、それ以降、富士通からの数多くのEMの提案、導入がなされている。さらに富士通の現場技術者の方々に、より深くEMを理解してもらうべく、さまざまな技術支援が行われている。当初、富士通技術者からは、EMがSystemwalkerの競合製品と思われていた。それが技術的な理解が進むにつれ、2つを連携させデータベースの詳細情報をSystemwalkerから一元監視できることが分かると、連携する価値が認められその便利さを実感してもらえた。その結果、提案や導入が増え、数多くの事例につながっている。
個別の詳細はEMでシステム全体はSystemwalkerで
「Systemwalkerは、お客様がシステム全体をうまく運用できるようにすることを目的に提供しています」と語るのは、富士通 ミドルウェア事業本部 アプリケーションマネジメント・ミドルウェア事業部 事業部長の藤井 泰氏だ。藤井氏によれば、システム全体の状況を把握して運用を進めるということと、個々のシステムの運用を把握することは別物だという。マルチベンダーのさまざまな製品が活用されているシステム全体を管理する場合、細かな情報だけでは必ずしも有効に運用できない。システム全体の監視では、まずは、ベンダー共通で簡易・早期に対処し、そのあとで細かな情報を活用しながら個々のシステムを最適化してゆくことが有効であり、情報の種類や細かさはそれぞれの製品ベンダーが追及してゆくと指摘する。
富士通では、最新のEM 12cについても早くから技術的な検証を開始している。その結果の評価としては、「11gでもEMは豊富な機能を持っていました。ただ12cではUIの改良によってすぐに導入してさまざまな機能を容易に活用できるという印象を持っています」と松石氏は語る。この部分には、GUIの一新による使い勝手の向上も大きく影響しているという。
また、データベースのライフサイクル管理部分についても評価を行い、さらにデータベースだけでなくJVM Diagnostics部分の評価も行った。Javaのプログラムの問題から原因を追及し、データベースのSQLに至るまでをシームレスに調査できることを確認した。
「EMでは、アプリケーションの1つの課題から、システム一連の性能監視ができます。まだ発展途上の部分もある機能かとは思いますが、アプリケーションの性能問題を解決するには、かなりいいものだと思います」(松石氏)。こういった機能が充実することで、顧客は個々のシステムの改善に注力してゆけるとのことだ。