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ビジネスリスクの回避はCFOの手に委ねられている

「CFO Japan Summit 2011」講演レポート

カントリーリスクやポリティクスリスクにも注目 

 80年代に入り、注目せざるを得なくなったリスクの第一が、カントリーリスクやポリティクスリスクである。現在もギリシャ、イタリアなどのニュースが世間を賑わせている。これらの国の状況いかんによっては、世界経済はもちろん、日本経済も左右される。「今は民間保険会社でもポリティカルリスクを引き受ける保険が登場している。加入を考えてもいいかもしれない」と近藤氏。

 次に資本市場リスクである。「先述した為替リスク、金利リスクに加え、日々の株価変動をチェックし、それをどう見ていくか。CFOにとって重要な役割である」(近藤氏)。第三はバランスシートリスクである。「倒産リスクを避けるにはバランスシートを統合的に捉えて資産・負債の構成を分析することがCFOにとって重要だ」(近藤氏)。そのほかにも国際税務リスク、金融監督当局リスクなどにもCFOは気を払わないといけない、と近藤氏は語る。

 90年後半以降も経営にまつわるリスクはさらに拡大していく。98年にソニーがSEC(アメリカ証券取引委員会)に対して、100万ドルの課徴金を支払ったようなSECリスク、エンロンやワールドコムなどを代表とする粉飾決算リスク、会計リスク(新国際会計基準の一般企業への適用、M&Aリスクなど)、犯罪・テロのリスク、個人情報漏えいなどのオペレーショナルリスク、風評リスク、大規模災害リスク、ジェンダーのリスクなど、「枚挙にいとまがない」と近藤氏。

 例えば大規模災害リスクといっても、今回の大震災については、経済的影響の収束傾向が見えてきているリスクである。一方、福島の原子力発電所やタイの大洪水によるリスクはまだ拡散しており、収束が見えていない。このように現在の企業は、さまざまなリスクに取り巻かれており、その対策がCFOの手にかかっているのだ。

リスクをマッピングし、それに応じたリスクファイナンスを

 これら拡大するリスクにはどのような策を講じればよいのか。リスクをマッピングし、それに合ったリスクファイナンスを講じることである。

 リスクファイナンスとは、ある組織体の被った損失を補填または相殺するために資金を確保すること。自己資本・内部留保、コンティンジェント・キャピタル/コミットメント・ライン(銀行借入・社債発行、地震などの災害時にのみ可能になる資本・資金調達手法)、リスクシェア保険プログラム(リスク主体である事業会社と保険会社の間でリスクをシェアする仕組み)、キャプティブ・プログラム(再保険会社を作ってリスクをヘッジまた時間分散する仕組み)、CATボンドやデリバティブ(キャピタルマーケットにリスクヘッジを求める)、伝統的保険などで構成される。

 「どんな想定外のリスクへも対応するには、リスクシェア保険プログラムやキャプティブ、CATボンド、デリバティブなどの対策が必要になる。しかしこれらの対策はお金がかかること。危険の度合いと時間という2つの軸から対策を講じていくのが得策だろう」(近藤氏)。

 講演の最後、最近の企業にとって究極のリスクとして近藤氏が冗談めかしながら挙げたのが、CEOのリスクである。「CFOにとっての最大のリスクはCFOになることかもしれないが、それに負けないでほしい。今日、紹介したリスク以外に、今後まだまだ新しいリスクは出てくる。それにどう対応していくか。CFOの手腕が問われている。みなさん、共に頑張りましょう」。近藤氏は参加者にエールを送り、講演を終えた。

写真1:一般的な対策について~リスクファイナンス
写真2:一般的な対策について~リスクマッピング

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この記事の著者

中村 仁美(ナカムラ ヒトミ)

教育大学卒業後、大手化学メーカーに入社。その後、ビジネスや技術に関する専門雑誌や書籍を発行する出版社、ITに特化したコンテンツサービス&プロモーション会社を経て、2002年、フリーランスライターとして独立。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://enterprisezine.jp/article/detail/3602 2011/11/24 07:00

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