ベニオフ氏とサンブリッジが出資する大型ビジネス始動
「この会場(ロイヤルパークホテル)は、20年前にオラクル、10年前にセールスフォース・ドットコムが日本市場での展開を発表した場所。われわれも本日の発表にあわせ、この会場にこだわった」
こう語るのは、コンカーの米本社のCEOを務めるスティーブ・シン氏。「日本法人の設立は1年前だが、世界市場ではクラウドベンダーとしてはセールスフォース・ドットコムに次いで2位の会社。フォーチュン500のうち、61%で利用される経費管理ソリューションのグローバルスタンダードであり、すでに日本でも100社以上の会社がコンカーの経費管理ソリューションを導入している」と語る。
そのセールスフォース・ドットコムのマーク・ベニオフ氏、日本オラクルの創業時の初代表であったアレン・マイナー氏が率いるサンブリッジが出資をおこない、社長は元SAPの創業メンバーである三村真宗氏が就任していることも同社の存在感を裏付ける。日本のIT市場では久々の大型ビジネスの始動とあって、会場には多くの参加者が集まった。
公共交通機関ソリューションで交通費、出張費精算を効率化
コンカーが手がける経費ソリューション分野は、交通費や出張費の精算の効率化が目的とされていた。法人カードが普及した米国のソリューションであり、電車など細かい都市での移動の多い日本での親和性がそれほど高くなかった。この市場に対して、コンカーは日本法人として徹底的にローカライズをおこなうというのが、今回の発表である。
そしてそのソリューションは、従来の「Travel& Expense」ではなく、ESM(従業員経費管理:Employee Spend Management)と定義し、公共交通の発達した日本の独特のニーズに適応させていく。その具体的な内容を、代表取締役社長の三村真宗氏が紹介した。
Concur Expense では、ICカード交通乗車券 (Suica、PASMO、ICOCAなどとおサイフケータイ) のデータを読み込んで、従業員経費管理を行うことができる。
IC カード交通乗車券を、PC につないだリーダーに読み込ませると、自動的に Concur Expense に接続し、必要なデータのみが吸い上げられ経路・運賃を手入力せず Concur Expense に取り込まれる。さらにジョルダン「乗換案内」との連動により、乗車区間の入力から運賃を入力することができる。またタクシーなどの領収書は、スマートフォンのカメラからの転送により領収書ストアに格納され関連する経費情報に添付される。
また日本では領収書の原本が必要となるが、経理部門が原本を受け取った時点でバーコードで読み取り、ステータスに反映するなどの配慮もなされている。
ガバナンスの面では、それぞれの企業の規定をルールとして設定し、規定に反する入力情報にはアラートを出す。これにより、悪意なき規定違反、管理職がルールの理解不足のための誤った承認を未然に防ぎ、管理部門と従業員の軋轢を水際で防ぐことができることも大きな利点であるという。
「従来の経費精算は、従業員にとっては時間の浪費、会社にとっては従業員のガバナンスが脆弱という課題を抱えていた。この背反する課題を両立させることが可能になる」と三村社長は語る。
クラウドアプリケーションとして機能向上
もうひとつの特長は、こうした経費入力データの分析機能である。規定の遵守状況、タクシーや出張などの特定項目の従業員の使用状況なども、数多くの企業の実績データに基づき分析され、グラフなどで可視化される。
人によっては管理されることを嫌がる人もいるが、「可視化されていると意識することで、自然に自らガバナンスに目覚めていく」のだという。
さらにConcur Expenseのメリットは、クラウドアプリケーションとしてどんどんアップデートされていくことだという。ほぼ毎月アップデートされ昨日が追加・改善されていくが、通常のERPなどの業務システムと違いユーザーはバージョンアップ料を払うことはない。
こうした様々な機能を持つ、コンカーのアプリケーションだが、強みは従業員経費管理という分野に特化したシンプルなソリューションにフォーカスしていること。
今後の本格展開で日本向けの機能を強化し、日本企業のバックエンド業務を効率化し企業成長に貢献していくと三村社長は語った。