障害発生をユーザーに気付かせない
「システムの利用者が、障害が発生してもそれに気付かないようにしたかった」
三菱東京UFJ銀行 システム部 基盤第三グループ 上席調査役 井澤 淳一氏は、複数あるCRMのシステムを統合する際、もっとも重視したのは可用性の向上だったと説明する。そのために採用したのが、IBM DB2 pureScaleとWebSphere Virtual Enterpriseの組み合わせだった。
その中の1つが、三菱東京UFJ銀行の複数CRMシステムを、DB2 pureScaleとWebSphere Virtual Enterpriseを用い統合化し、高可用性基盤を構築した事例だ。
三菱東京UFJ銀行は、名前からも分かるように複数の銀行が合併して今日の姿となっている。そのため、各種ITシステムは合併前のそれぞれの銀行から引き継いだものもあり、CRMについては旧東京三菱銀行由来で顧客からの問い合わせや窓口で利用する「RMS」と「FIRST」という2つのシステム、旧UFJ銀行由来で外回りの営業担当の業務を支援するための「SーCRM」と「お客様ナビ」という2つの、合計4つの個人顧客向けのCRMシステムが稼働していた。
それぞれのCRMシステムは、由来が異なるだけでなくシステムの稼働環境もばらばらだった。さらにシステムごとに用途も異なるので、データ量や検索の種類もまた異なるものだった。RMSとFIRSTは個人顧客すべておよそ6,000万件のデータを持っていた。これらは、顧客と担当者が電話や窓口で直接コンタクトした際に利用されるので、システムが止まらない可用性と十分なレスポンスが求められる。
一方のS-CRMとお客様ナビは、営業担当が顧客先訪問の前などに必要な情報を得るために主に使われ、複雑な条件による重たい抽出検索の処理が行われる。ちなみに、S-CRMにはおよそ900万件、お客様ナビには500万件あまりのあらかじめ抽出済みの顧客データがある。
「複数のCRMシステムを運用していく上で、システム的な課題としては、RMSについてはハードウェアのサポート切れを迎え、ハードウェア性能的にも限界が来ていました。さらに障害時のリカバリ時間がかかるなどの問題もありました。さらに業務上の問題としては、システムがばらばらなために二重入力の手間やデータ鮮度の問題、S-CRMやお客様ナビでは分析対象顧客の不足という問題も発生していた」(井澤氏)。
これらの問題を解決するため、4つのCRMシステムを統合化することになる。
「要件としては、高可用性を追求し、あとは拡張性も必要だと考えました。さらにマーケティング施策の変更や法規制への対応などもあるので柔軟性も必要です」(井澤氏)。
さらに、統合化による業務面での効率化、データ鮮度を向上させ営業効率を上げ顧客満足度を向上することも目的とした。さらには、データを一元管理することでのコスト削減も目指した。