開発部門と運用部門の間の壁を取り払う手段「DevOps」
「2009年に開催されたO'Reilyによる国際会議で、写真共有サイトのFlickrは1日10回リリースを実現していると報告され話題となった。新しいサービスをどんどん提供できたのは、DevOpsという考え方を取り入れているからだ」(上村氏)。
もちろん、Flickrだけではない。FacebookやeBay(インターネット通信販売)、Netflix(オンラインDVDレンタル会社)、Etsy(ECサイト)、淘宝網(タオバオ:中国系ECサイト)など、非常に速いスピードで新しいサービスを提供している会社は、DevOpsを採用していると上村氏は説明する。
DevOpsという考え方はどのように普及し、これらの企業に取り入れられるようになったのか。上村氏は普及してきた過程を次のように説明する。
2008年にO'ReilyによるWebの性能や運用に関するVelocityという国際会議において、PuppetやChefという運用自動化のツールが紹介されたことから始まる。そして2009年ごろからITベンチャー企業やITマネジメント協会、オープンソースコミュニティ、クラウド業界、アジャイル・コミュニティなどで、開発と運用を連携し、一体化した形で開発を進めるという考え方に注目するようになった。
この開発と運用が一体化した形で進めるという考え方に「DevOps」という名前をつけたのは、ITコンサルタントのPatrick Dubois氏である。以降、「DevOps Day」というイベントが世界各地で定期的に開かれるようになり、DevOpsという考え方が普及。2012年5月には東京でも「DevOps Day」が開催され、多くの来場者を集めた。
一般企業にもDevOpsを適用する動きが登場
「最近になって、DevOpsという考え方を一般の企業にも広く適用しようという動きが出てきた」と上村氏は指摘。IBMをはじめ、HP、OracleなどのIT企業もDevOpsに関する情報を積極的に発信しており、「先駆けとなる適用事例も出始めている」(上村氏)。
なかでも、DevOpsがエンタープライズ分野でも注目されているいちばんの理由は、「開発から運用までの時間がかかり過ぎていることだ」と上村氏。2011年にIBMが大手の調査会社に委託して行ったサーベイによると、修正を入れたバージョンをユーザーが使えるようになるまでに要した平均的な時間は4~6週間になるという。冒頭で紹介したFlickrと比較すると雲泥の差だ。
その他にも先述のサーベイからは、「70%の予算が保守に費やされている」「65%のお客様が自動化の欠如によりソフトウェアのリリースが遅延すると感じている」「39%のアプリケーションはデプロイ(利用可能な状況にすること)に1~7日かかる」「37%のプロジェクトが予算オーバーする」などの課題があることがわかった。
「これらの課題は、開発と運用が連携することで解決できる。つまり開発と運用の溝を埋める方法としてDevOpsは期待されている」(上村氏)。