対症療法のみならず根本療法=再発防止策のプロセスを確立すべき
歴史ある医療においても「診断」は困難な行為であり、(調査によって数値は異なるが)約10~30%の「誤診」が起きている。瀬尾氏の経験上、トラブル・プロジェクト診断の誤診率は、医療よりも圧倒的に高いという。また、トラブルの「再発」も多く、これは誤診または根本治療がなされていないことに起因するようだ。
医療の場合、症候分類(症候学)に基づいて決められた項目を診断するが、プロジェクトの診断においても、トラブルの「徴候」を分類し、体系化できると瀬尾氏は指摘する。例えばプロジェクト全体なら報告遅延や課題管理異常、計画(乖離)ではスケジュール遅延やスケジュール変更、プロジェクト・マネジャーという「人」が対症の場合であれば勤務状況異常やコミュニケーション欠落などに、その徴候を見ることができる。
診断に続く「治療」については、表面的な症状を軽減するための「対症療法」と、病気の原因そのものを取り除く「原因療法(根本療法)」の2つに大きく分かれる。プロジェクトではほとんどが対症療法であり、原因療法がなされていないという。スケジュール遅延に対して「残業でリカバリ」や「人員追加でリカバリ」、コストオーバーに対して「コンティンジェンシー(予備費用)の取り崩し」といった対応は、すべて対症療法だ。
また、治療の根本療法でもよく使われる「医療手術」は、「術前同意」「術前管理」「術前措置」「術後管理」といったプロセスが確立されており、トラブル・プロジェクトにおいても、このような体系化が望まれる。
瀬尾氏は、トラブル・プロジェクトの診断・是正プロセスについても改めて、3つのプロセスと2つのゲートを使って整理(図2)。ポイントとして、是正計画には対症療法のリカバリのみならず、根本療法となる「再発防止策」を組み込むこと、是正措置のガバナンス期間による評価と確認のプロセスにおいて、再発防止策を企業内プロセスへ組み込むことなどを紹介し、講演を終えた。
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