今までの連載では、「日本企業の進化論」の概要を解説しました。今回から3回に分けて、「グローバル化におけるオペレーション革新」をテーマに解説します。新興国の経済発展を背景に、日本企業は生産拠点のアウトソースを越え新たな市場の開拓を進めています。これに呼応して、金融取引も新たなグローバル化の局面を迎えています。今回は、「金融機関のグローバル化」に関して解説します。
「金融のグローバル化」-投機的な動きの過去~実需に伴う現在
「金融のグローバル化」が叫ばれて久しいですが、昨今において、その流れはますます加速していると言われています。「金融がグローバル化する」というのは、どういうことなのでしょうか? また、これにより、企業の活動にはどのようなインパクトがあるのでしょうか?
「金融」について定義しているものをまとめると、「資金が余剰しているところから、不足しているところへ橋渡しすること」と言い換えることができるようです。過去バブル期において、日本では資金が余剰状態にあり、これが海外での投機を生みました。欧米においては資金繰りが苦しい企業もあったため、上記の「金融」という言葉の定義には合致していたとも言えましょう。
しかしながら、現在起こっている「金融のグローバル化」の流れは、各国の経済の発達や、情報技術の発展に伴い、ビジネスそのものが地球規模で展開している点で大きく状況が異なります。
資金を必要としている主体の1つが企業になるわけですが、その活動の場は、ますます海外へと移って行こうとしています。図1は、国際協力銀行が、毎年製造業に対して行っている調査です。海外での売上高比率、生産比率は少しずつではありますが伸びています。2015年度の予測では、さらにその生産比率を伸ばそうとしています。

図2は、同行の調査で2011年度中に新しく増やした海外現地法人数です。2012年度に起きた様々な動きが反映される前ですが、中国やインド以外のASEAN5諸国において、より活発化しています。これまでは、生産活動をアウトソースするケースが多く見られていました。
しかしながら、各国が急速に経済を発展させており、企業にとってはマーケットとしての魅力度も上がっています。図で見られる通り、現地に設立する法人は「生産」を目的とすると同時に「販売」を目的とする数が増えていることがわかります。

こういった動きに応じて、金融取引に関するニーズも変化します。実需の関係で為替が変動し、経済発展のおかげで物価も変動するので、資金を効率的に動かすことが必要となります。従業員の生活も大きく変わります。会社としても、福利厚生としての様々な金融サービスを用意しておく必要が出てくるでしょう。
まとめると、「金融のグローバル化」は、従来あったような投機的な資金の移動ではなく、ビジネスでの実需に伴う側面がより大きくなっているのです。企業のグローバル化の動きと併せて、金融のグローバル化に対するニーズは、より規模を拡大していくものと予想されます。
この記事は参考になりましたか?
- 日本企業の進化論-激動の時代に生き残るための選択肢連載記事一覧
- この記事の著者
-
ベイカレント・コンサルティング 小塚 裕史(コヅカ ヒロシ)
株式会社ベイカレント・コンサルティング 執行役員京都大学にて情報工学を修了。野村総合研究所にてシステム開発、新規事業立上げ、ブーズ・アンド・カンパニー、マッキンゼーで、事業戦略、業務改革のコンサルティング業務に従事。2012年に入社し、現職。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
この記事は参考になりましたか?
この記事をシェア