ビジネスアーキテクト養成講座の第1回ではビジネスアーキテクチャーの概要、第2回ではビジネスアーキテクチャーを表現する概念モデルおよび3つの階層についてご説明しました。第3回となる今回は、海外におけるビジネスアーキテクチャーの活用状況、ビジネスアーキテクトの役割と組織、ロードマップと利用可能なビジネスケースなどについて解説していきます。
ビジネスサイクルの溝を埋める「ビジネスアーキテクチャー」というアプローチ
欧米には、エンタープライズアーキテクチャーやビジネスアーキテクチャーに関する標準化団体やコンサルティングおよびトレーニングサービスを行っている事業体が数多く存在します。そのうちの1つであるエンタープライズアーキテクチャー・エグゼクティブカウンシルによる調査「Business Architecture in Practice(2009年)」によれば、(1)64%のビジネスの失敗は間違った戦略から引き起こされている、(2)半数以上のビジネスプロジェクトが失敗している、(3)1/3の事業体が年間戦略計画において期待される結果を達成していない、と報告しています(図1)。競争環境の激化と顧客需要の絶え間ない変化が起きている今日、各ビジネスサイクルの間の溝を埋め、連携を強化していく斬新的なアプローチとして「ビジネスアーキテクチャー」が大きくクローズアップされています。

ところで、前回は事業戦略を中核としたビジネスアーキテクチャーの3つの層の関係についてご説明いたしましたが、さらに大きな観点から3つの層の関係を見ていきましょう(図2)。事業体が持続可能な成長をしていくためには、有効なビジネス計画に基づく独自のビジネスモデルを構築していくとともに、ビジネス環境の変化とその影響を検知し、適切な戦略を実行できるような体制を構築していかなければなりません。私たちの提案するビジネスアーキテクチャーは、このような実践のための包括的かつ基礎的なフレームワークを提供するものです。

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白井 和康(シライ カズヤス)
ITコンサルティング会社所属。IT業界において20年以上にわたり、営業、事業企画、マーケティング、コンサルティングと幅広い役割に従事。2年前のある日、「日本のビジネスに光を!」という天からの啓示を受けて以来、ビジネス構造の究明と可視化に没頭中。好きな言葉は、「人生とは、別の計画を作るのに忙しいときに起こる出来事である。」(ジョン・レノン)Facebookページ「ビジネスアーキテクチャー研究ラボ」を運営中。
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