急激に加速する日本企業の海外展開で注意すべき“現地事情”
消費財でも、日本企業の海外展開が加速
ここ数年、日本企業の海外企業M&Aよる海外事業の拡大が続いています。飲料・加工食品業界を例に取って見てみましょう。大手国内飲料・加工食品メーカーはビジネス成長の源泉を海外にシフトさせており、売上・利益に占める海外割合が年々高くなっています。
図表1はここ数年の大手飲料・加工食品メーカーによる海外企業大型M&Aの一例です。
子会社が本社の言うことを聞かない
弊社が日頃お付合いさせて頂いている企業にも海外展開を加速しているところは多いのですが、皆様から「買収した海外子会社が日本の親会社の言うことを聞かない」というお困りの声をよく耳にします。
よくお聞きするものを一部ご紹介します。
- 欲しい情報がタイムリーかつ十分な内容で提供されない
売上や利益の概況については海外子会社から自主的に定期報告されるが、日本の親会社が求める詳細情報は言わないと出てこない、かつ出てくるまでに時間がかかる。加えて、情報の正確性が疑わしいものもある。
- 日本にとっての重要戦略が後回しにされる
子会社に対して日本が重視する戦略を指示しても、現地のビジネス事情に合わない、より利益につながる現地立案施策を優先したいと言って実行に移さない。
- 日本の親会社で成功した手法を全く受け入れない
現地社員に有効な手法であることが理解されず、現地のオペレーションに合わない、多額のコストが必要などの適当な言い訳をつくってかわされる。
一般論は海外子会社に通用しない
皆が海外子会社のガバナンスに頭を悩ませる一方で、世の中にはガバナンスモデルと呼ばれる確立した理論もあります。多くの企業がそのモデルを使って海外子会社にガバナンスを利かせようとしていますが、十分に効果を出せていません。
図表2は一般的なガバナンスモデルの例と各モデルの概要、およびとそこで起こっている“かわされ事例”を、過去のプロジェクト経験に基づいてまとめたものです。
次ページ以降で、それぞれのガバナンスモデルを解説します。