Evernoteと連携するアプリケーション開発のコンテストが開催
これだけユーザーを増やしている理由の1つには、前述のようにEvernoteが他のアプリケーションとの連携を可能にしているところにあると思われる。そのために提供しているのがEvernote API。これは、順次新しいものが提供されており、Evernote自体がそのAPIを利用して新たな機能拡張を行っている。なおかつ、Evernoteの技術情報については、可能な限りのものが公開されている。これもまた、連携アプリケーションの増加に繫がっており、さらにユーザーが増える理由でもあるだろう。
ところで先日、そのEvernoteのCEO フィル・リービン氏が来日し、都内で「Evernote Devcup 2013 Kick off in Tokyo」というイベントが開催された。Evernoteに関連するソフトウェア開発エンジニアやデザイナーなどが300名程も集まるというもの。そこで説明されたのが、Devcupというイベントだ。これは、Evernoteと連携するアプリケーション開発のコンテストで、年に一度Evernoteが開催している。開発者とユーザーインターフェイス/ユーザーエクスペリエンスデザイナーのための開発コンテストとなっている。今後6ヶ月間にわたり、世界各地でエンジニアを対象にしたMeet upやオンラインイベントが開催される予定だ。昨年はこのDevcupに2,000名以上の開発者とデザイナーが参加し、数100の素晴らしいアプリケーションやサービスが誕生しているとか。
イベントで講演したリービン氏、「会社を立ち上げるというのは、探求して旅に出るようなものです」と語る。Evernoteという会社の目標は「世界をより賢くすること」。それには、第2のブレインを持つことだと言う。
「Evernoteというサービスが、その人にとっての2つめのブレインになるようにしたい。世界をより賢くする、という大きな目標のためには、パートナーやデベロッパーの力を借りることになります」(リービン氏)
コンテストだけでなく起業までサポート!
今回Evernoteは、エンジニアのためにアプリケーション開発コンテストから、さらに1歩踏み込んだ施策も行う。それが「Evernoteアクセラレータ」プログラム。これは、Evernote Devcup 2013への応募者の中から最も優れたチームを選抜し、米国Evernote本社に1ヶ月間招待してEvernoteのメンバーと一緒にチームのアイデアに磨きをかけるというものだ。開発のサポートはもちろん、渡航費など一切合切はEvernoteが負担する。さらには、必要であれば現地で投資家とのミーティングもセットしてくれるとか。
Evernoteアクセラレータプログラムには、スポンサーもついている。それがHonda Silicon Valley Labとドコモ・イノベーションベンチャーズの2社だ。前者はご存じ自動車会社の本田技研研究所の北米における研究拠点の1つ。イベントに登場したHonda Silicon Valley Lab シニア・プログラム・ディレクターの杉本直樹氏は、今回このプログラムを支援する理由として次のように語る。
「シリコンバレーはとてもオープンなところです。我々もぜひそういうオープンな活動をしていきたいということでオープンラボをやっています。そんな中、新しいことをEvernoteのデベロッパーと一緒にやることにしました。今回は、Devcupのために自動車の情報にアクセスするAPIをいくつか提供します。それをEvernoteのAPIと合わせて、新たなアイデアで新しいアプリを作ってもらえればと思います。それにより、自動車を楽しく使ってもらえる環境ができればと考えています」
またドコモ・イノベーションベンチャーズ 取締役副社長の秋元信行氏は、「今回のDevcupやアクセラレータプログラムで、ドコモにとっての第2のEvernoteが出てくればと考えています」とのこと。スマートフォンをより活用するためのキラーアプリの登場に期待しているようだ。
起業まで視野に入れることができる支援、こういうのが本当の意味でのビジネスにおけるエコシステムと言うことになるのだろう。最後に成功したベンチャー企業のCEOであるリービン氏が、起業するため、新しい製品やサービスを生み出すためのアプローチとして興味深いことを言っていたので紹介しておく。
「まったくの新しいオリジナルアイデアが必ずしも必要ではありません。Evernoteもそうだが、昔から考えられていたことをサービスにしています。オリジナルのアイデアでなくても、生活を便利にするもの、その実行力が重要です。仮にアイデアが思いつかなくても、たとえばこれから、1週間、自分がどういうことをしているかを観察してみてください。あるいは家族や友人を観察してみてください。生活の中でいつも当たり前のようにやっているけれど、じつはそれを好んでは行っていない、そういったことを見つけるのです。普通にやっていることが、じつはやりたくないことかもしれない。それを少し便利にするにはどうすればいいかを考えます。少しだけ改善するようなことに目を向ければ、そこからたくさんのアイデアが出てくるはずです。それが、起業のきっかけになるでしょう。」(リービン氏)