開会式では、実行委員長の村津敬介氏から、今回のフォーラムでは、数々の前例のない取り組みが実現したという報告があった。
東京で初めてウォートン教授陣によるジャーナリスト向けセミナーが実現したこと、フォーラムへの参加がMBAプログラムの一部として認められるため、現役MBA学生がフィラデルフィアから24名参加していること、そして、参加者は海外からの参加が多く実に650名に上りキャンセル待ちが出ていることが紹介された。
さらに、ウォートンはペンシルバニア大学の一学部に過ぎないが、今日この場には、ペンシルバニア大学学長エイミー・ガットマン氏を迎えていることが紹介され、ガットマン氏が登壇した。
「投資価値の再評価」が進む、大学という存在
偉大な大学は、知識を創造し、活用する
大学は人々の生活を変え、社会の前進に貢献する。今日は、その大学を大切に思う多数の卒業生に囲まれ、心から誇りに思う。私は、偉大な大学の目標は、「社会への効果を最大にするため、知識を創造し、活用すること」にあると思う。これは極めて遠大で、かつ重要な目標である。そして、いまだかつてなく、この目標が世界にとってこれほどまでに重要になった時は無かったのではないだろうか。
高等教育は、受ける価値があるのか?
しかし、今、アメリカでは多くの人々が、高等教育の価値に疑問を投げかけている。今日は、この疑問に対する答えを示したい。
先日、元教育長官のウィリアム・ベネットが、アメリカに3,500存在する大学の中で、どれだけの大学が学費に見合う価値を提供しているか、つまり投資対象になりうるだろうか、という質問を投げかけた(注1)。数千億円の年間予算を持つ大学の学長としては、この疑問を真剣に受け止め、その答えを知らなければならないと思った。
ウィリアム・ベネットの結論は、3,500の大学の中で、学費に見合う価値を提供しているのは、わずかに150の大学、即ち全体の4%に過ぎない、というものであった(注2)。喜ばしいことに、ベネットによるとペンシルバニア大学は上位10校の一つであった。
ここで、ベネットの視点についてあらためて考えてみたい。ベネットの視点は、高等教育とはつまるところ職業教育だ、というものである。今までも、このような視点に基づく評価は多い。だから、卒業後の収入によって投資効果を測定できる、という。