「性能が悪い!直すまで帰さない!」と幽閉され?
梶山さんが受け持つ範囲はアジア・パシフィック。西はパキスタン、北はモンゴル、南はニュージーランドと幅広い。日本滞在中の貴重な合間を縫ってインタビューに応じてくれた。翌日から2週間で4ヶ国を回るとのこと。外務省の海外安全ホームページは常に目を通しているそうだ。
肩書は「セールスコンサルタント」。いわば技術営業。しかし本人はデータベースのエンジニアという自覚が強い。顧客の前ではあるときはアーキテクト、あるときはトラブルシューティング、またあるときはチューニングなど、さまざまな役目をこなしている。
顧客の現場に赴くと厳しい状況に直面することもある。あるとき梶山さんはMySQLが通信システムで運用されている現場を訪問した。「なんとなく予感はあった」そうだが、実際に着いてから初めて「性能が悪い」と聞かされた。事前に伝えてくれれば多少準備のしようがあるのだが、現地についてから突然である。しかも顧客は「直すまで帰さない!」とすさまじい剣幕でまくしたてる。
梶山さんは覚悟を決めて「わかりました。15分ください」と言い、トラブルシューティングのシーケンスに沿って解析を始めた。このときのトラブル原因はわかりにくかったものの、さほど難易度は高くなかった。MySQLを導入して日が浅い国や現場ではまだノウハウが浸透しておらず、基本的な知識がないままに運用されてしまうことがあるそうだ。
しばらくして梶山さんは原因を突き止め、状況を解説する段になった。お互いに母国語ではない英語を使わざるをえないため、コミュニケーションにはおのずと多少の制限がうまれてくる。そこでホワイトボードや大きな模造紙に図を描いて説明する。ただしこの日の顧客はいらだっていてなかなか話を聞く状況にない。そこで梶山さんは「これから説明しますので、5分間だけ黙って話を聞いてください」となだめ、ようやく納得してもらった。
解説の後、チューニングを施すと激烈に性能が改善した。それまで険悪だった顧客は手のひらを返すように上機嫌になり「もう帰っていいよ」と放免に。後日訪問すると梶山さんを社長室に通し「あのときはありがとう」と感謝するほどの待遇の差だったそうだ。データベースエンジニアとしてのスキルを生かしつつ、セールスコンサルタントとしての接客もこなしている。
MySQLはWebベースのシステムでの導入が多いものの、近年ではインドの国民総背番号制度など公共系システムへの導入事例も広がっている。選定の背景もさまざま。なかにはオープンソースであることが選定の理由なることもある。それは「ソースコードまで見ることができるから」。ソフトウェアとしての透明性である。そうはいっても自力で全てできるかというと難しい。その場合にはエンタープライズ版ライセンスを使うという選択肢もある。透明性とエンタープライズ版、この組み合わせができるのもMySQLならではだ。