Windows Azureに日本リージョンが登場、国内だけでも災害対策が可能に
「ただソフトウェアを開発し提供するだけでなく、マイクロソフトがもっとソフトウェアの面からハードウェアの設計にも協力しなければなりません」(バルマー氏)
日本には、ハードウェアを提供するOEMベンダーが多数ある。彼らとともに次世代のデバイスを作り上げていくのだとバルマー氏。日本のOEMハードウェアベンダーとのパートナーシップを、ことさら強調した。
これは、マイクロソフトがクラウドを強く推進してしまうと、ともすればパートナーとの良好なビジネス関係を壊しかねないということだろう。マイクロソフトだけでクラウドの世界を突き進むのではなく、あくまでもパートナーとの良好関係を維持する。こうメッセージすることで、他地域と異なる独自市場の日本への配慮を見せたとも捉えられる。
さらにバルマー氏は、「マイクロソフトは、今後はデバイスとサービスの会社になるために変貌をします」と続ける。ここで言うところのデバイスとサービスには、マイクロソフトには共通の強味がある。それが、環境を選ばないということ。デバイスは、タブレット、ラップトップ、スマートフォンに対応し、インターフェイスもキーボードはもちろん、タッチパネルでもスタイラスペンでも最適に利用できるソフトウェアを提供する。サービスはクラウドのことであり、Windows Azureなどパブリッククラウドでも、企業のプライベートクラウドやオンプレミスのWindows ServerでもOK。もちろん、両者を組み合わせたハイブリッドでも自由に行き来できる。
このパブリックからプライベート、オンプレミス、ハイブリッドを一貫して提供しているのはマイクロソフトだけであり、それこそが競合となるGoogleやAmazon、Salesforce.comといったベンダーに対する強味だという。そして、クラウドでもオンプレミスでも、一元的に管理できる管理ツールを提供しているのもマイクロソフトの強味。さらには、開発用、セキュリティ確保のためのツールもすでに準備がある。すべてをまとめて提供でき、なおかつそこにはマイクロソフトとしてのグローバルな規模感と、豊富な経験もあると自信を見せる。
そんなマイクロソフトは、当然ながらクラウドに今後も大きな投資をしていく。その中の1つであり、日本の企業、政府のための取り組みとなるのが、今回発表となったWindows Azureの日本リージョン開設だ。首都圏と関西圏の2箇所に設置する国内データセンターから、Windows Azureのサービスを提供する。これまで日本のWindows Azureのサービスは、アジアリージョンに組み込まれていた。そのため、基本的には香港、シンガポールの2つのデータセンターを利用してきた。これが国内データセンター開設で、海外に重要なデータを置くことへの懸念をまずは払拭する。保守的な、日本企業にとては大きな前進だろう。
そして、国内に置くことで、ネットワーク的なレイテンシーの問題も解決し、性能面の改善も期待できる。さらに、2箇所のデータセンターを十分に距離を離し設置することで、国内データセンターだけでディザスターリカバリーが可能になるのも大きなメリットだ。
この発表で1つ気になったのが、従来進めてきた富士通とのアライアンス「FUJITSU Cloud PaaS A5 Powered by Windows Azure」。日本マイクロソフト 代表執行役の樋口泰行氏は、「富士通では、2011年からWindows AzureベースのクラウドサービスであるA5を運用してきました。今後は双方のサービスの価値を統合した形で、よりよいサービスを提供する新たな両社の提携に進化させます」と言う。今回の日本リージョンで、富士通との関係も変えざる得ないようだ。新たな提携がどのような形になるかは、この日は明らかにしなかった。今後、改めて両社のアライアンスがどう進化するかの発表があるようだ。
富士通とだけでなく、クラウドのサービスもまた、パートナーとのエコシステムが大事だと樋口氏は言う。Windows AzureのSIを行うAzure Circleパートナーを含め、46社のパートナー企業がありそれらパートナーからAzureサービスを届ける体勢が、すでに整っていることが強調された。
これまでパートナービジネスを中心に展開してきたベンダーは、クラウドになりビジネスモデルが直販型になるとどこも苦労する。とくに米国本社がもともと直販モデルだと、代理店モデルを大事にする日本流のやり方がなかなか理解されない。過去を引きずらずに直販と代理店のバランスを取り、新たなエコシステムをどう築き上げるか。クラウドビジネス成功の鍵は、その辺りにありそうだ。