SAP HANAは速いだけじゃないんです
さて、先週はOracleがクラウドに関する協業を相次いで発表し、そのすきにOracle Database 12cが正式リリースとなるなど話題が満載だった。これらについてはこの週報ではなく、別途記事で紹介、考察したいと思う。
そんな慌ただしい中、SAP HANAの最新版SP6の発表もあった。新製品の内容については、加山さんが記事にしてくれているのでそちらも参照して欲しい。今回のSP6の印象は、速さを売りにしていたHANAが、いよいよ本格的に企業に受け入れられるよう変化を見せたバージョンだなというもの。速さの追求は一段落し、むしろ運用管理のしやすさ、開発のしやすさに進化のポイントが移行し始めた印象を受けた。
これまでは、インメモリーデータベースで、既存のOracleなりのリレーショナルデータベースを置き換えることができるのだ、これこそが次世代のデータベースだと言わんばかりの、勢いのあるメッセージが多かった。とはいえ、それが仮に可能だったとしても、すべてをHANAにするというのは、顧客にとってあまり現実的とは言えないだろう。であれば、既存の環境の中に、新しいHANAをスムースに取り入れてもらうようにする。そのための進化が今回のSP6なのではと思うところ。
中でもスマート・データ・アクセスは、その象徴的なものだろう。これは、いわゆるデータベースの仮想化機能だ。これまでも、データベースの仮想化の機能は世の中にあったが、柔軟性面では評価に値したが、処理性能的には今ひとつだった。今回のスマート・データ・アクセスでは、あくまでも接続先はHANA。高速に処理したいものはもちろんHANAに置き、アーカイブ的なものはハードディスクベースのデータベースに置くというように、データベースの中で適切なデータ配置をとることができる。
そしてここでは、先日発表されたSybase IQの存在が重要だ。データベースサイズが大きく、さらに成長が続くようなビッグデータを扱いたければ、メモリーベースのHANAではコストは跳ね上がりかねない。拡張性についても、それほど柔軟とは言えないだろう。そこにHANAよりは遅いけれど、データベースとしてはかなり速いSybase IQを融合することで、拡張性を安価に手に入れられるようになる。SAP的にはHANAとSybase IQの両方があってこその、リアルタイムデータ処理基盤の完成というわけだ。
もう1つ、今回の進化で注目なのは、信頼性、可用性の向上部分だろう。まだまだこれらの領域は、実績あるOracleやSQL Serverなどには及ばない部分も多い。しかしながら、これらがしっかりしてこないと、特に日本の保守的な顧客からなかなか採用されない。今後は、よりいっそうHANAの信頼性、可用性の向上に、SAPも力を入れてきそうだ。速さに加えこれらの機能が市場でも評価されるようになると、本格的にHANAのデータベース市場でのポジションも大きく前進しそうだ。