ネット選挙をきっかけに、有権者自らも行動し始めた
これまでの公職選挙法では、選挙に関する情報を選挙期間中に発信することはできなかった。そのためYahoo!みんなの政治も選挙期間中は一切更新ができず、選挙における意思決定に少しでも情報提供をしたいと考えるヤフーにとって、これまでの選挙は十分とは言えない状況であった。
2009年には、インターネットでの選挙運動解禁を求める署名サイトをヤフーが立ち上げ、7万人以上もの署名を集めるなどネット選挙解禁に向けた動きも見せた。ネット上の情報をもっとオープンにし、政治についてユーザーである有権者が語ることで、政治を身近に感じ、当たり前のように政治にコミットしていく社会を築く素地を作っていこうとする考えがそこにはある。
今では、ウェブサイトやソーシャルメディアを議員や有権者個人も持つのが当たり前となり、議員の考えていることはブログやTwitter、Facebookなどを通じて自ら発信する時代となった。それぞれの議員のメディアを追っていくと、政治家の情報がつぶさに理解できるようになる。今回のネット選挙解禁によって、これまで以上に議員の考えていることが直接知れるようになったことで、政治家のみならず有権者も大きく変化した。
「今回の選挙で大きく変わった点は、有権者自らが誰々に投票したという書き込みや投稿がでてきたことだ。これまで、ネット上で政治や選挙に関することを書き込むことにどこか躊躇する空気があったが、ネット選挙解禁により議員への応援や支援のメッセージがでてきたのは、有権者同士で徐々に政治について議論する場ができてきた」
Yahoo!みんなの政治の中では、特定の候補者名で投稿されているTwitterの投稿をリアルタイム検索で表示している。もちろん、そこには良いコメントも悪いコメントも同じように表示され、それにより多様な意見を知るきっかけにもなる。これまで以上に政治に関する情報が、有権者からも発信されるようになったことの意味は大きい。
「Yahoo!みんなの政治は、どこよりも簡単に分かりやすく、をモットーにしている。それこそが、Yahoo!みんなの政治が目指す世界でもあり、それによって有権者同士の議論が活発化し、投票率向上につながっていくことを期待している」
選挙だけでなく、普段の政治行政に目を向けるためのインターネット
今回の選挙では、結果的に得票率が52.61%となり、参議院選挙としては過去三番目の低さであった。ネット選挙の実現によって選挙期間中も情報が発信されても、やはり2週間という期間は短い。
「改めて、選挙期間中以外に政治に興味関心を持つための施策をもっとするべきだと感じた。選挙が始まってから政治に関心を持とうとするのは難しい。だからこそ、選挙だけでなく普段の政治にネット上に情報がたくさん蓄積されてくる情報をどう活かしていくかが課題」
普段の生活においては年金や保険など、何らかの公的なサービスを通じて政治や行政に関わりを持つ機会や考える場を増やすことで、政治への興味関心は出てきやすくなる。たとえば、区役所では引っ越しや結婚など人生の節目で関わることが多いが、現状の行政サービスの使いづらさを感じる場面が多々ある。
もちろん、行政もいいサービスを市民に提供したいと考えているが、それらが満足に発信しきれてはいない。そうした各地域の行政サービスを横断し、情報をまとめてどの行政地区でどういったサービスを受けられるかが可視化できるプラットフォームなども考えられる。それにより行政地域同士の比較もでき、サービスの効率化や質の向上に対する意見も発しやすくなる。
「そうした行政サービスを見える化し、ユーザーの課題解決を支援する取り組みは今後の展開として十分にある。検索を通じ、自分の地域の情報を円滑に取得できる環境を作ることで、選挙だけではない普段の政治や行政の動きを可視化できるのではないだろうか」
ネット選挙だけではなく、普段の政治行政の情報をインターネット上で可視化、比較化する“ネット政治”を考えることが重要だ。そこから投票率へとつながるだけではなく、正しい情報が十分に取得することで投票の“質”を向上することもできるのだ。投票率だけではない、投票の質の向上こそ、Yahoo!みんなの政治が見据えている先なのだ。