チームワーク・プラットフォームのkintoneをアップデート、業界を変化させる興味深い事例も多数出現中
「インフラ部分は、一言で言うと信頼性が高い。ここ最近、米国のクラウドは怪しいぞというのが分かってきました。どうやら中を見ているぞ」と、青野社長は海外のクラウドサービスにはセキュリティやコンプライアンスの面などからも不安がありそうだと指摘する。これに対しサイボウズのクラウドサービスは、すべて日本人が開発し、運用している。バックアップについても、西日本、東日本と2つのデータセンターがあり、国内だけで完結しているといった点が強調された。そして「日本で、ここまでのクラウドのシステムにしているのは、サイボウズだけでは」と自信を見せる。
青野社長の自信を確固たるものにしているのが、顧客数の順調な伸びだ。2013年7月時点で4,000社を越え、国内で先を走っているSalesforce.comの顧客数もまもなくキャッチアップできるとのこと。「Salesforce.comの一人勝ちは、間違いですね」と青野氏。そのクラウドサービスの中で、kintoneのユーザー数は700社を越え、こちらも順調に増加している。
kintoneは業務アプリケーションの開発環境ではなく「チームワーク・プラットフォーム」です
その自身にあふれる青野社長、kintoneは「僕たちの言葉で言うと、チームワーク・プラットフォームです」と言う。一般的な分類ならば、kintoneはクラウドサービスのPaaSに分類されるだろう。クラウド・データベースを基盤に、その上でアプリケーション開発ができる環境だ。kintoneは、それらと何が違うのか。それは「チームワークを高めるのに必要な、3つの要素をセットで提供していることです」と青野氏。データベース、ワークフロー、コミュニケーション、これらを活用し組織のチームワークを高めるプラットフォームとなっているのがkintoneだと言う。
「僕らとしては、kintoneはまったく新しいジャンルのものだと思っています。いままでの常識でkintoneを見て欲しくはありません。それだけユニークなものなのです。」(青野氏)
kintoneはサービスの提供を開始してから1年半が過ぎ、当初は中小企業の導入がほとんどだったが、最近になり大企業での採用が増えてきている。また、社内だけで利用するのではなく、社外をも巻き込んだ情報共有を目的とした利用も増えている。そして、個別のニーズに合わせ、作り込みを行うニーズも増加しているとのことだ。
大企業の導入例としては、欧州の家電メーカーがSalesforce.comから乗り換えたものがある。使い勝手が良くない、もう少し安価にできないかという顧客の要望があり、kintoneを新たに採用。家電量販店を廻る営業担当者の報告システムを構築し利用している。また、羽田空港では迷子などを探す際の館内放送の依頼管理を、紙ベースの仕組みからiPadとkintoneを活用する仕組みに移行した。こちらでは、kintone化することで迅速な対応が可能とり、さらに一度作り上げたシステムを現場の要望に合わせ担当者が自ら手を加えより使いやすくカスタマイズしていることが報告された。
このように大企業での採用が増えたとは言え、1社あたりのユーザー規模は大きくても1,000ユーザー弱だ。まだ全社規模でkintoneを利用するには至っていない。大手の導入のアプローチとしては、IT部門飛び越してユーザー部門からの直接の引き合い多いのも特長だ。
もう1つのkintone活用の傾向が、社外との情報共有。クラウドの仕組みなので、IDを社外の人に発行すれば、会社をまたいだ情報共有が容易に実現できる。この用途としては、住宅メーカーが顧客である施主と、介護事業の企業では家族と情報共有する事例が出ている。これまでこのような企業では、おもにメールと添付資料で情報を一方的に顧客なりに届けていた。そういった情報提供者とそれを受けとる者という関係ではなく、kintoneを使ってチームを組んでいく。そのような新たな変化が起こっているのだと、青野氏は説明する。
この社外との情報共有をよりやりやすくするための機能が、今回のバージョンアップで追加された。それがゲストスペース機能だ。社外の人にIDを発行し、そのIDで利用できるゲストスペースを用意した。ゲストは、ゲストスペースにはアクセスできるが、それ以外のkintoneのシステムにはアクセスできない。社外の人とも、適切に情報共有が可能になる。