イノベーションの「10の型」はチェックリストである
前回の ”The 10 types of Innovation” の記事については、いろいろな反応をいただきました。幸いなことにIIT Institute of Designで実際にこの本の著者の講義を受けているという方からもご連絡をいただきました(その方の留学記はIIT Institute of Design留学記から読むことができます)。
このコンセプトをどのように使っているのかという話しになり、この「10の型」をチェックリストとして使っていると教えていただきました。たしかに、この「10の型」を使えば、自社、あるいは取り組んでいる事業のどの部分が優れているのかのチェックができると共に、「平均点」以下になっている部分がないか確認する際に役に立ちそうです。
マイケル・トレイシーとフレッド・ウィアセーマは『ナンバーワン企業の法則』(日経ビジネス文庫;現在は絶版)において、価値基準として「オペレーショナル・エクセレンス」、「製品リーダー」、そして「カスタマー・インティマシー」という3つの基本戦略があると紹介しています。3つの基本戦略の詳細は書籍やその他の解説に譲りますが、企業はこれら3つの基本戦略のうちどれかに注力をして差別化を図ると同時に、それ以外は少なくとも平均水準以上であることを目指さなければなりません。
トレイシーとウィアセーマが主張するこの3つの基本戦略は、「10の型」の枠組み、特に大きな3つの分類(「基本構造」、「提供物」、「経験」)に通じるものがありますね。
イノベーターのための道具箱は、イノベーション創出のプロセスに効く
「10の型」がチェックリストとして使えるとなると、気になるのは、ではどうやってその前の段階、つまりイノベーションを興すための取り組みを行うのかというところです。もちろん、それが簡単にわかれば多くの企業は苦労しないわけですが、実際の現場においては、日々紹介されるさまざまな理論をひとつずつ、じっくりと時間をかけて研究をするというわけにもいかないでしょう。
そこで今回紹介するのは、イノベーションを生み出すための手法を気軽に知るための本としてお薦めの『The Innovator’s Toolkit』です。
本書にはイノベーションを実現するために利用できる58の手法が紹介されています。もともと2008年に初版が出ているのですが、2012年には改訂版が出ています。本家のAmazon.comでもなかなかの評判の一冊です。
紹介されている58の手法はイノベーションを興すための4つのステップ(後述)に基づいて分類されています。手法のひとつひとつの紹介は数ページ程度で、その手法の概要と具体的な利用手順、そしてより詳しく知りたい場合の参考文献が紹介されています。
まずはこの本を読んで、どういう手法があるのかという全体像を頭に入れた後、特に使えそうだと思う手法を取り上げ、個別の本や論文などに当たるというのが良い使い方かもしれません。手法の紹介ページは図も多く、参考文献に当たらずとも、この本だけで理解することももちろん可能です。
58の手法が具体的にどういうものかについては、本書の公式Webサイトに目次が載っていますので、そちらを参照してください。