イノベーション創出モデル「D4モデル」とは何か?
本書のメインであるD4モデルは、図でも紹介したように、「機会の定義」→「アイデア創出」→「デザイン開発」→「実現性検証」という4つのプロセスから構成されています。
最初の「機会の定義」は、『イノベーションへの解』でも紹介されている「片づけるべき用事(Jobs to be Done)」を定義することで、イノベーションの機会を発見します。ここでは課題の見方を変える(リフレーミング)ことなどを通して、本当に重要な課題に絞り込むところまでを行います。この段階で使う手法としては、「手法1:片づけるべき用事(Jobs to be Done)」や「手法6:シナリオプラニング(Scenario Planning)」など13個が紹介されています。
次の「アイデア創出」の段階では、絞り込まれた課題の解決策を考えます。解決のためのオプションを考え、それを絞り込んでいきます。この段階で使う手法としては「手法20:ブレインライティング(Brainwriting)」や「手法30:KJ法(KJ Method)」など19個が紹介されています。
そして「デザイン開発」の段階で、具体的なソリューション開発に進みます。最終製品の機能要件を定義するのではなく、ソリューションのコンセプトを開発するのがこの段階で行うことです。この段階で使う手法としては「手法40:ピュー・マトリックス(Pugh Matrix)」や「手法43:デザイン・スコアカード(Design Scorecards)」など15個が紹介されています。
最終的に、そのソリューションの実現性を検討するための「実現性検証」プロセスに進みます。ここでは、ソリューションを提供するにあたって想定される曖昧な部分をつぶすことが目的です。この段階で使う手法としては「手法48:プロトタイピング(Prototyping)」や「手法50:SIPOCマップ(SIPOC Map)」など11個が紹介されています。
このそれぞれの段階で、具体的にどういう手法を使ったら良いのかというのが、本書のメインになります。ひとくちに「イノベーションのために使える手法」といっても、「アイデア創出」の段階で使える手法と「実現性検証」の段階で使える手法は違うものになります。それぞれの手法の単なる使い方だけではなく、何のために使うのかという目的を知ることができるという点で、とても参考になる一冊です。
業界のルールを変える「11の要素」と「10の型」の関係性
ちなみに本書の冒頭の解説部分では、業界のルールを変える11の要素というものが紹介されています。具体的には「顧客セグメント」、「顧客エクスペリエンス」、「チャネル」、「ブランド戦略」、「収益の流れ」、「主要な提供物」、「補助的な提供物」、「主要なプロセスとリソース」、「補助的なプロセスとリソース」、「パートナー」、「コスト構造」という要素が挙げられています。
これを見てみると、前回紹介した「10の型」の各要素と基本的には同じだということがわかります。本書ではこの11の要素を特に整理せずに使っていますので、この要素を念頭に置きつつ、「10の型」を参考にするのが、まとまっていてわかりやすいのではないかと思います。