「The Innovator’s Toolkit」が定義するイノベーションプロセス
本書の冒頭では、58の手法を使う前提として、イノベーションを実現するための枠組みや考え方が紹介されています。本書では、イノベーションを実現するステップにはフロントエンドとバックエンドの2種類があるとしています。そのステップをまとめると次のようになります。
フロントエンドは4つのDから始まる単語でまとめられているため「D4モデル」と呼ばれています。この部分ではイノベーションの機会を定義したうえで、実現性の検証までを行います。その後、バックエンドでは具体的なソリューションとして開発から商用化、そして商用化後の改善のステップまでを行います。こうして見るとわかるように、バックエンドのプロセスはイノベーションというよりは、フロントエンド部分で見極めたアイデアを活用し、開発する(exploit)ためのステップだといえます。
フロントエンドのプロセスは、リスクに対してオープンなマインドで楽しんで取り組んでいく段階です。顧客が抱えている解決すべき課題(Jobs to be Done)に注意を向け、それを解決するためのアイデアを出しますが、失敗が大きな痛手とならないように、早い段階で失敗する(fail fast and cheap)ことが求められます。そのためプロセスといっても、実際には何度も繰り返しが行われるような流れになります。
一方バックエンドのプロセスは、まさに“プロセス”で、ステージゲートのように、各段階で次のステップに進んで良いかという判断が行われます。なお、本書で紹介されている58の手法は、基本的にフロントエンドで使われるツールになります。