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週刊DBオンライン 谷川耕一

Microsoftが「デバイスとサービスの企業へ転換」するために必要なこと


個人的な見解だが、クラウドサービスの本命はSaaSだと思っている。とはいえ、現状はIaaSのほうが市場では隆盛だろう。Salesforce.comのようなSaaSよりも、Amazon EC2やMicrosoft AzureのようなIaaSのほうが、情報システム部門には理解しやすく導入の敷居も低いのだ。とはいえ、IaaSが革新をもたらすのは、まさに情報システム部門の仕事の範囲。加えて、それをとりまくハードウェアベンダーやSI企業の業務がターゲットだろう。その範囲では、クラウドが世界を大きく変えるとまではいかないのでは。あらゆるビジネス現場そのものに革新をもたらすのは、人により近いところをターゲットとするSaaSのほうだ。SaaSを中心としたソリューションであれば、従来の枠組みを取り払い、ワークスタイルを変革して、新たな価値を生み出すと考えている。

Dynamicsの強味は既存Microsoft製品群との親和性の高さ

樋口社長

 そんなワークスタイルの変革を目指すSaaSを提供しようとしているのが、Microsoftだ。

 先週、Microsoftが「Microsoft Dynamicsフォーラム 2013」を開催した。このDynamics、DB Online読者の方々は、まだなじみ深いものではないかもしれない。これは、Microsoftが提供しているSaaSで、ERPとCRMの領域を網羅している。このDynamicsの最新情報や事例を紹介するのがこのイベントで、今回で3回目の開催。「昨年度の1.5倍の参加登録者がありました。関心が高まっているのに、びっくりしています」と日本マイクロソフト 代表執行役 社長の樋口泰行氏は言う。

 Microsoftのクラウドサービスというと、Microsoft AzureやOffice 365が最初に頭に浮かんでしまう。実際、Microsoft自身の押し出し方も、これまではこれら2つに注力されてきたように見える。とはいえ、樋口氏、Dynamicsはいま社内でも大きな注力分野だと強調する。

 「Dynamicsは、グローバルでもスタンダード的な存在となりつつあります。なので、たとえば日本企業がM&Aを行い、買収先の海外企業がDynamicsを使っているなんてこともあり、そこから日本でもDynamicsを入れましょうとなる例もあります」(樋口氏)

 海外でのDynamicsの導入はかなり先行しており、日本では若干遅れは取っているものの、着実に関心が高まりつつあるとのことだ。

 このようにDynamicsが評価される理由は、なんといってもMicrosoftの情報基盤群との高い親和性だろう。SQL Serverのようなインフラ系はもちろん、もっとも強力なのはMicrosoft Officeなどのビジネスには欠かせないツール群との連携が深いことだ。業務の中で、Word、Excel、PowerPoint、OutlookなどOffice製品を利用するのは当たり前だ。さらに、SharePointやLync、OneNote、Yammer、Skypeなど、さまざまざまなMicrosoft製品を利用しながら、業務を進められている企業も多いだろう。

 これらのソフトウェアは、単独でもツールとしての利便性は高いが、連携させることでさらに価値は高まる。この場合の連携は、たんにデータの受け渡しができるだけではない。中核にクラウドサービスのDynamicsを配置することで、情報をタイムリーに共有、管理しながら、各種ツールを使い業務のライフサイクルをスムースに回せるようになるのだ。

業務の流れの中核となるDynamics
業務の流れの中核となるDynamics

 多くのSaaSのサービスは、基本的にWebブラウザベースのユーザーインターフェイスとなる。別の作業をしたければ、ブラウザ画面を切り替えて利用するのが普通だ。さらに、SaaSの外でSaaSにあるデータを活用したければ、データを抽出しダウンロードして、適切に変換してからExcelなどに取り込む手間が必要だ。これらがDynamicsが中核にあれば、Outlookのメールから自動的にDynamicsの情報にアクセスしたり、Dynamicsの画面からYammerを使って情報共有したり、Skypeで関係者に連絡を取ったりといったことがシームレスに行える。常に必要なデータはDynamicsでリアルタイムに管理される。ユーザーは自分がいまDynamicsを使っているのか、OfficeやYammer、Lyncを使っているのかを意識する必要はなくなる。

 当日のイベントでは、このさまざまなツールをシームレスに連携させて利用し、業務がスムースに流れていく様子がデモンストレーションで示された。その際に利用した端末は、Surface。自社のオフィスでも営業訪問先や出張先でも、作業はすぐに始められる。来年登場する新しいDynamicsのユーザーインターフェイスも紹介され、Windows 8に最適化されているようでSurfaceのタッチ操作で容易に操作を行っていた。

 Office製品を使い、YammerやLync、SharePointにSkypeを活用し、その後ろにはDynamicsが。そして、これら製品間の壁のなさが、「IT環境をMicrosoft色に染めた」際の大きな魅力となる。Dynamicsのよさを最大限に引き出すには、この「Microsoft色に染める」ことは重要なポイントとなりそうだ。これは、デファクトともなっている各種クライアントツールから、SaaSのERP、CRMまですべて1ベンダーで揃えているMicrosoftだからこそ得られるメリットであろう。

日隈寛和氏
日隈寛和氏

 日本マイクロソフト 執行役 Dynamics ビジネス本部長の日隈寛和氏は、次のように語る。

 「さまざまな製品を、いかに業務の中で活用するか。それを実現するのがDynamicsであり、これにより生産性を上げて業務を効率化できます」

 これはDynamicsがSaaSの1つのサービスとしてではなく、各種ツールを活用する新たなワークスタイル変革の中核として提案できるMicrosoftの強味だ。

 日隈氏は講演中に何度か「我々はこのビジネスに本気です」と繰り返し、強調した。個々の製品やサービスを売り込むのではなく、トータルでのワークスタイル変革を提案し、それを市場が受け入れれば、このMicrosoftの本気度も証明されることになるだろう。

次のページ
Surfaceの強味は既存のモバイルPCの流れを分断しないタブレットであること

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この記事の著者

谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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