Watsonが今後のソフトウェア戦略の鍵となる
ソフトウェア事業戦略の発表で、これはIBMらしいなと思ったのが「SMACS」に注力するのだということ。Social Business、Mobile First、Analytics/Big Data、Cloud、Securityの頭文字をとってSMACS。アナリティクス、さらにはセキュリティを入れているところが、他の多くのベンダーと異なるところだ。
アナリティクスを強調しているのは、Watsonの存在があるからだろう。PureDataやDB2、InfoSphere BigInsightsなど、ビッグデータ関連の製品もソリューションもたくさん持っており、直近ではそれらのほうがビジネスに貢献するはず。それでも、この領域で「IBMらしさ」を発揮するのならアナリティクスでありWatsonなのだろう。他の分析、解析のソリューションとは異なり、認知して考えるコンピュータ「コグニティブ・コンピューティング(Cognitive Computing)」を実現する技術であり、今後IBMに大きな価値をもたらすものとして位置づけられている。
とはいえ、このコグニティブ・コンピューティングという言葉は、まだまだ聞き慣れない。いまのところ、IBMだけが使っている。逆に言えば、これを実現できているのが、現時点でIBMだけだということでもあるけれど。
さて、このWatsonについて、IBMでは「Watson Foundations」という基盤として展開する。この基盤にはWatsonだけでなく、その他のビッグデータ関連の製品やアナリティクス関連の製品も組み合わされており、アナリティクス、ビッグデータ処理全体のための基盤プラットフォームとなる。
「現時点で、Watsonは特別なサービスです。Watsonを利用することで何が良くなるのか、それを徹底的に分析して進めることになります」と言うのは、日本IBM ソフトウェア事業本部長 ヴィヴェック・マハジャン氏。すでに日本の顧客においても、Watsonを活用する話がいくつか進行しているそうだ。
「いま、顧客がすぐに使えるのはWatson Foundationsです。これは、インフラ基盤として提供していきます。それにより、顧客のコグニティブ・コンピューティングの実現をサポートします。ビッグデータの次のステップとしてコグニティブ・コンピューティングを考えている人に、この基盤を提供していきます」(マハジャン氏)
残念ながら、現時点でWatsonのエンジンは日本語で認知できない。なので、日本の顧客も当面は英語での活用を考えているそうだ。Watsonの日本語版は、年内にはまだ登場しないだろうとマハジャン氏は言う。以前IBMの基礎研究所でWatsonの開発に携わっている人に話を聞いたところ、Watsonが認知するためのロジックは英語でも日本語でも問題ないらしい。なので日本語対応のWatsonがないと言うのは、日本語で学習した日本語で考えられるWatsonのエンジンがまだ存在しないと言うことだ。
日本語でWatsonを使いたい機運が高まれば、そんなに遠くない将来に日本語で認知するエンジンも登場することになるだろう。とはいえ、その学習には相当な時間がかかりそうだ。まずは、特定分野に絞ってとなるかもしれない。医療など、すぐにでも活用したい分野でいち早く日本語版Watsonが登場することを期待したい。