いま、マーケティング分野でのデータ活用が熱い
とはいえ、市場では競争が激化している。勝ち組と負け組はすぐにはっきりしてしまう。変化や革新を続けないと生き残れない。そのために必要なのがデータ活用。なので何度目かのBIブームが再びIT業界では起こっている。今回のBIブームはビッグデータとセットだったり、クラウド上での利用だったりするのがポイントだ。前者は言わずもがな、後者のクラウドは「俊敏性」が1つの売りとなる。
これまでは手間とコストをかけデータウェアハウスを構築し、分析者という専門家が使うのがBIツールだった。そのため、オンプレミス型のお高いシステムが中心。それが企業のあらゆるところでBIをという流れが起こり、専門家以外もBIツールを使うようになる。多くはレポーティングが中心だが、分野によっては高度な分析を行い新たな可視化や判断にBIツールを活用する動きが出ている。
中でもマーケティング分野において、データ活用して効率的なマーケティングを実現したいニーズが高まっている。それが最近話題の「マーケティングオートメーション」にもつながる。マーケティングを自動化するためにもデータ活用は必須であり、広告業界ではDMP(data Management Platform)といったキーワードも注目されている。DMPは、デジタルマーケティングを実現するために必要なさまざまなデータを一元的に管理し、データを使ったマーケティングの最適化が行えるようにするものだ。
ウィングアーク1stがDMPの可視化、
分析に特化した新たな独自クラウドBIのサービスを開始する
このDMPの可視化、分析のためのクラウドサービス「MotionBoard Cloud for DMP」の提供を開始すると発表したのが、ウィングアーク1stだ。マーケティングの分野は変化も激しく特に俊敏性が重要。ということもありクラウドでのサービス展開となったようだ。
「for Salesforceはすでにありますが、MotionBoard Cloudはそれとは別のサービスです。これで本格的にクラウドを始めます。ウィングアーク1stはソフトウェアベンダーではありますが、今後はさらにソリューションサービスのベンダーになります。それで、今年は躍進したい」と語るのは、代表取締役社長の内野弘幸氏だ。
ウィングアーク1stは、「Dr.Sum EA」というBIツールを提供してきた。これはすでに4,290社の導入実績があり海外製品が主流のBIツール市場で、国産ベンダーとして独り気を吐く存在でもある。Dr.Sum EAは独自データベースも内包するオンプレミス型のソフトウェアだ。これに加え「MotionBoard」という多彩な表現で情報の可視化を実現する情報活用ダッシュボードも3年前から提供している。こちらの導入実績は160社ある。さらに、このMotionBoardをSalesforceのforce.comの上で動くようにしたクラウドサービス「MotionBoard for Salesforce」も提供している。こちらは提供開始から1年ちょっとが経過したところで76社が導入している。Salesforceの上という限られたマーケットの実績と考えると、顧客のこのツールへの評価も高いものがありそうだ。
Dr.Sum EAもMotionBoardも、汎用的なBIツールという位置づけになる。なので、データウェアハウスだけでなく、ERPのレポーティングなどどのようなデータベースのデータでも可視化し分析できる。これに対し今回発表したMotionBoard Cloud for DMPは、DMPの可視化、分析に特化したクラウドサービスだ。そして、同じクラウドのサービスでもこれまでのSalesforceのPaaSを利用するのではなく、ウィングアーク1st独自のクラウドプラットフォームで動かす。これによりSalesforce以外の、企業が独自に構築する「プライベートDMP」を対象にできるのだ。
たんに「MotionBoard Cloud」として汎用クラウドBIサービスとしての提供もできたはずだ。そうせずに「for DMP」とすることで、よりこのサービスのターゲットをはっきりさせている。
「従来のERPと連携するレポーティングBIのところは引き続きやります。それに加えセールス&マーケティング部分のPDCAのところで、企業の収益拡大につながるBIをやります。これをソリューションBIと呼んでおり、おもにクラウドでサービス展開していきます。サーバーを立てインテグレーションする5年くらいのスパンで考えるような(旧来のデータウェアハウス)システムではなく、サービスを選んで使うニーズに対応するものです」
ウィングアーク1st 営業部 ソリューションビジネス推進部 部長の中土井 利行氏は、MotionBoard Cloudは今後のクラウドサービスの基盤となるものであり、Salesforceの経験をもとに新たにラインナップしたものだと言う。現状のクラウドのサービスでは、マーケティングやセールスの領域が先行している。新たな製品やサービスは広くたくさん売りたいと考えがちだが、適用領域をあえてマーケティングに絞って展開するところは興味深い取り組みだろう。
この新たなクラウドサービスの展開方法についても、いままでのチャネルではなく主要なDMPベンダーと連携していく。さらに、すぐに利用できるようにするために、オープンデータも活用できるようにする。たとえば、人口統計や気象観測データなどをウィングアーク1stで用意するとのことだ。基本使用料は10ユーザーで月額10万円から。追加1ユーザーは1万円となり、かなり小さく始められるのも特長だ。サービスの提供開始は6月からを予定しており、5月からトライアル利用の募集が開始される。