「教育×テクノロジー活用」によるイノベーションは、まだまだ初期段階
本セッション「イノベーション – 教育~ITで世界の教育はどう変わっていくのか」では、株式会社ビズリーチの南壮一郎氏がモデレーターを務め、パネリストとしてHarvard Business Schoolのヤンミ・ムン氏、慶應義塾大学の村井純氏、Udemyのデニス・ヤン氏が登壇した。
まず、パネリストらに「テクノロジーと教育の現状」をどう捉えているかが問われた。
オンライン学習の研究をしているムン氏によると、昨年、最も人気のあったオンラインの学習コンテンツはマサチューセッツ工科大学(MIT)が提供する「電子回路」コースで、登録者は15万人にも達した。しかし、コースを終了したのはそのうちの5%未満。この「ドロップアウト率95%」という数字は、オンラインコースでは珍しくないという。
なぜ、オンラインコースの落ちこぼれ率はこれほどにまで高いのか。強制でないなどの理由もあるが「これまでの講義形式の授業を単にオンラインで提供しているだけ」で、イノベーティブでないことが一因だとムン氏は指摘する。
「現状では、よりアクセスしやすく、より没頭できるコースを作ることに成功している創造的なコースは例外的で、オンラインラーニングの大きなブレイクスルーはまだ起こっていない。とはいえ、オンラインの発達により先生たちは競争しなければならなくなり、退屈な授業をしてはいられない時代になってきた。よりクリエイティブに学生の想像力をとらえなければならない状況になっている」(ムン氏)
生涯教育におけるスキルベースの教育の展開をミッションとするオンライン講座サイト、Udemyのヤン氏は、テクノロジーの発達により個人のスキルセットのレベルが従来以上に大きく変化していることに触れ、「今の子どもの65%は将来、今は存在しない職業に就くことになる。現在の教育システムはこの変化のスピードに追いついていないのではないか」と問題提起した。
「若者の40%が失業していることを踏まえ、若い世代が正しい教育を受けることを担保すべきだ。教育において最も重要な一個人にとっての将来のスキルとは、新しいスキルを習得することそのものだと思っている。新しい世代の人たちは、私たちとは違うかたちで学びを得るのではないか」(ヤン氏)
日本のインターネットの父と呼ばれる村井氏は、教育が従来、国家主導で実施されてきたことを指摘。インターネットでグローバルにつながった世界のなかで、教育に使用する言語などを含めて、それぞれの国がどう適応していくのかが問われると述べた。
「たとえば、大学と企業は学生インターンなどを通じて連携し、学生に国際的な学びの機会を提供する。各国の大学はネットワークに参画し、協力しながら一定の卒業証書を発行し、グローバルに学生を輩出していく。日本としてはまずアジア圏でこのような体制ができればと思う」(村井氏)