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週刊DBオンライン 谷川耕一

ビッグデータ活用の本命領域はデジタルマーケティング、そのアプローチはWebからか顧客からか


 ビッグデータという言葉は、ようやく世の中に定着した感がある。これまではどちらかと言えばビッグデータ活用のための、情報基盤を実現する技術部分に注目が集まっていた。企業にとって有効で具体的な情報活用方法や、企業の中で中長期に運用していくための方策などの情報は、まだまだ少ないのが現状だ。そんな中、今後ビッグデータ活用の具体的な事例として増えてきそうなのが、デジタルマーケティングの領域だろう。リスク管理にビッグデータを活用する例もあるが、企業業績を伸ばすという目的であればマーケティング活動でのビッグデータ活用が本命と言える。

企業内にすでにある顧客情報を収集し分析するというアプローチ

 逆に、もともとの企業システムに蓄積してきた顧客に関する情報を活用し、新たなマーケティング活動に発展させるアプローチもある。これはある意味、ビッグデータという言葉が流行する前からあるデジタルマーケティングへのアプローチだ。従来は顧客の360度ビューやOne to Oneマーケティングという言葉で語られてきた領域でもある。

 銀行などの金融業界ではすでにこれを実施しているところも多い。たとえば、ネット銀行などが台頭してきたことで新たな競争にさらされている地銀などが、率先してこれに取り組んでいる。銀行の場合は預金口座で名寄せすることで顧客を特定しやすい。顧客が営業店でいつ何をしたのかが分かるし、預金の状況や給与の振り込み状況、どのような金融商品を購入してきたかも分かる。これら顧客と銀行との関わりの情報を収集し新たな営業活動に活かすのだ。

 この銀行の顧客情報活用の領域ですでに多くの実績があるのが、アナリティクスに強みを持つSASだ。「SAS Marketing Automation」という製品があり、これを活用することでマルチチャネルでどのようなOne to Oneのキャンペーンを実施すればいいかを、顧客情報を分析することで自動化できる。

 顧客情報を分析して顧客を理解する。これをSASでは「Customer Intelligence」と呼んでいる。さまざまな顧客情報を世界中の企業で分析してきた実績があるところが、SASの強みでもある。小売り向け、銀行向け、保険業向け、証券業向けなどのデータ分析モデルがすでに蓄積されており、顧客データをどう分析し活用すればいいかがはっきりしていないユーザーも、業界や業種のベストプラクティスのテンプレートに自社データを当てはめてみるところからデータ活用を始められるのだ。

顧客情報を分析して顧客を理解する、「Customer Intelligence」

 この方法では、企業内に複数あるシステムの顧客情報を統合するところから始めることになる。そのために一元化された顧客データベースを新たに作る方法も提案されてきたが、昨今ではバーチャルに統合化するほうが主流だ。大規模な統合顧客データベースを構築するよりも、そのほうが迅速に顧客データの活用が始められるからだ。このデジタルマーケティングへのアプローチは、顧客をよく知るSASのようなベンダーならではと言えるだろう。

Customer Intelligence システムの機能全体像

データ量やサーバースペックを心配する前に成功するマーケティングシナリオを考えろ

 顧客が特定できるビジネスを行っている企業であれば、このように顧客情報の分析から入るのは比較的スムースなビッグデータ活用となる。昨今のビッグデータのソリューションでは、高度な分析やビッグデータを高速に扱える性能があることは当たり前だ。その上で具体的なデータ活用のシナリオまでもを提供できるかがポイント。デジタルマーケティングの実現においては何テラバイトのデータを何秒で検索できるかよりも、業界や業種で有効なマーケティングの成功シナリオをいかに提供し実現できるかが鍵となる。

 ところでかつてSASでは、企業内に蓄積されている顧客情報分析からのアプローチには強みを持っていたが、前出のアドビのようなWeb上の行動履歴情報の活用はそれほど得意としてこなかった。しかしながら今では、「SAS Adaptive Customer Experience」という製品も提供しており、Webの行動履歴なども収集しそれを使ったオンラインマーケティング・シナリオの実施も可能としている。もちろんこれをSAS Marketing Automationと供に活用できれば、Web上の行動から購買やサポートなどに至る顧客とのすべてのチャネルを活用するカスタマージャーニーの最適化も可能となる。

 自社がどのようなビジネスを行っており、そのためにどのような顧客情報を蓄積しているのか。それにより選択すべきデジタルマーケティング実現へのアプローチは異なる。少なくとも最初に考慮すべきことは発生するデータの量やそれを蓄積するためのストレージ容量、大規模データ検索のためのサーバースペックではない。自分たちのビジネスに対してどのようなマーケティング・シナリオを書けばいいのか。それをサポートしてくれるツールはどれで、その際のパートナーは誰なのか。それらを見極めるところから始めるべきだろう。

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谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

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