コミュニティ活動でキャリアアップ
吉田:システム管理者も従来のイメージと変わっていかなければ、大場さんの言うように淘汰されていくと思います。ではどう変わればよいのか。例えば田辺さんのようなイノベーターにどうすればなれますか。
田辺:人がやることにはノウハウに個性がかけ算されます。だから現実的に同じ人間を育成することはできないというのが答えですね。ただイノベーターを育成する一つの解として提案したいのが、「Innovation Cafe」です。これは7月17日から始動する企業内イノベーターとして成長するための異業種コミュニティです。私も実行委員を務めています。
大場:私がコンピュータシステムの開発の方法を学んだきっかけは、Meadowという宮下尚さんが開発したオープンソースソフトウェア(OSS)のコントリビューターとして参加したのがきっかけなんですね。SIerで行われるシステムの開発手法は建築業界のやり方を非常に参考にしていて、システムをまるで建築物であるかのように作ります。たとえば最初に住みたい家を定義して、それに合う設計をし、資材を集めて作っていくようなやりかたです。しかし、ソフトウェアには建築物とは大きく異なる「目に見えないもの」という特徴があって、同じようなやり方では必ずしもうまくゆきません。完成したシステムは、最初に想定したものとは違ったモノができてしまうことが多い。一方、2社目のグリーでは「何を作ればよいか」という答えがなく、開発の指標は、ただユーザーがどうすれば喜んでくれるかなんです。ユーザーファーストの開発です。クラウドワークスも同様で、答えは用意されていない。しかも開発はアジャイル。これはOSSの開発手法に近いんです。もし僕のような人材を作るとすれば、OSSのコミュニティに参加することをおすすめします。
吉田:OSSのコミュニティに入るのに、ためらいや怖さは感じなかったんですか?
大場:東京に出てきたばかりで、誰も知り合いがいなかったんです。その寂しさ、ぼっち感を解消したいと思い、参加したので怖いという思いはありませんでしたね。宮下さんに初めてお会いしたときは、「捨てられた子犬みたいに仲間を求めていたよね」と言われましたが…。
吉田:お二人とも、コミュニティ活動をされていますが、知らない人とでも話をするのは特に苦手ではないんでしょうか。
田辺:私は基本的に好きですね。元々好きだったとは思うのですが、職業柄というところも大きいと思います。例えば、当社では2003年にプライベートクラウドを導入しましたが、当時はクラウドという言葉は当然なく、だれも理解していません。そんな状況で自分が考えていることを実行するには、まずは人にきちんと考えが伝わるように話すことなんです。これまでいくつもの新しい試みをしてきましたが、そのたびに人に分かるように伝える苦労をしてきました。その結果、話すのが苦になるどころか、話し好きになったんだと思います。
大場:今の会社に転職してからは、いろんなところから講演の依頼が来るようになりました。ただ話すのは苦手なので、今回のパネルディスカッションもできればやりたくないぐらい(笑)。でも断ることはしません。