OSでLinuxが当たり前となったように、データベースでオープンソースのPostgreSQLが使われるのは自然の流れ
―なぜPostgreSQLがエンタープライズ領域で利用されるようになったのでしょうか。どういう点が進化した結果、スタートアップ企業などではなくトラディッショナルな大手企業にも採用されるようになったのでしょう?
Alsheimer:データベースに限らず、オープンソースのソフトウェアがかなりの伸び率を示していることがベースにあると思います。始まりはOSのLinuxであり、その動きが他の層にも及びつつあります。結果的にデータベース層のところでもオープンソースソフトウェアを活用しようという動きになっています。
OS以外の層にもオープンソースをというのは、オープンソースでもシステムが十分に機能することが分かってきたからです。オープンソースソフトウェアを利用し、さまざまな実績が出てきた。これはデータベース層でも使えるぞということになったのです。
大手企業でもオープンソースのソフトウェアが使えるということが分かってはきたのですが、データベースのところで使うにはデータの重要性を考えるとまだ懸念があった。ところがそこにコストセーブという波がやってきた。企業システムの中で大きな費用を占めているのがデータベース層です。PostgreSQLならそのコストを数分の1にできる。そういったことが、大きな後押しになっていると思います。
数年前にもPostgreSQLを活用する動きはありました。とはいえそれはクリティカルではない領域で使う話でした。そこから製品の信頼性も高まり、いまはミッションクリティカルでも利用するようになった。通信会社のKorean Telecomなどではミッションクリティカル領域で実際にPostgreSQLを数多く使っており、そういう利用実績が広がりつつあります。
EnterpriseDBでは、そういったミッションクリティカル領域でPostgreSQLを使うための品質面でのサポートをしています。ローコストでトレーニング、サポート、さらにはエンタープライズでも使えるようにする追加機能を提供しPostgreSQLの活用を支援しています。もう1つのEnterpriseDBの役割は、エンタープライズ企業向けの「コマーシャルパートナーシップ」です。これはPostgreSQLのコミュニティでは提供できないものです。
―技術的にはどのような進化があった結果、エンタープライズで採用されるようになったのでしょうか?
Alsheimer:EnterpriseDBが企業からもっとも評価されている技術ポイントは、Oracle Databaseとの互換性です。トランスレーション・レイヤーを持つことで、遅延性なくOracleとの互換性機能を提供しています。PostgreSQLのシンタックスもOracleのコマンドも同じように処理できます。また、高可用性機能、レプリケーション、モニタリング、管理ツールなど、エンタープライズで利用するのに必要なさまざまなものもEnterpriseDBの機能として提供しています。
Momjian:エンタープライズで利用されるようになった理由としては、技術的な面はあまり大きな影響はなかったのではと思っています。たしかにレプリケーション機能はエンタープライズで利用するには必要です。とはいえ、むしろ現在の普及要因は環境面のほうが大きいと思います。OSではLinuxが当たり前になり、いずれはデータベースもオープンソースでというのは自然な流れなのではないでしょうか。
OSのLinuxに比べればデータベースは5、6年後れをとっているでしょう。データベースにオープンソースを選ぶ際には、いままでは少し不自由なところもありました。PostgreSQL以外のオープンソースデータベースは、どちらかというと小さい領域向けだったからです。MySQLもそうですし、最近登場しているNoSQLのMongoDBなどもそういう傾向があります。エンタープライズ向けはPostgreSQLしかないでしょう。PostgreSQLは18年にわたり開発を続けており、エンタープライズで利用する準備は十分にできていました。結果的に信頼性があるという「レピテーション(評判)」が出てきたのが、普及には大きく影響していると思います。
信頼性を得るには時間がかかります。機能が揃い、信頼性があるという評判も出てくる。すべてが揃って初めて、エンタープライズで利用されるようになると思います。