3年以内に見直すつもりが
高木 こういう法律の造りってよくあるんですか?
鈴木 質問が飛んできたのを返すために、事後的に部分的にあてていったので、まあ、そういう場合は、当初の考えにないものを入れていくことで体系性は崩れたりしますよね。説明も苦しくなるところはあるかもしれません。
高木 ちゃんとここに書いてありますよ?なぜこれをカウントしないかということが書いてある。「個人の権利利益を侵害するおそれが低く」って、書いてあるんですよ。
鈴木 そういう理由付けなら、個人情報の保護の対象からも、この趣旨で除外すべきというほうがロジックが合うはずだろうと。
高木 はい。
鈴木 おっしゃる通りですね。
高木 ええ。ええ。
鈴木 おっしゃる通りです。ただ、現行法の作りはそうはなっていない。だから立法論になるんですよね。
高木 国会で議論している段階で、本当はあるべき答えに行きついていたんじゃないでしょうか。しかしその時点ではもう全体までは直せないから小手先の修正で…
鈴木 まあ、そういうことなんですかね。
高木 とりあえず中途半端でも法律を通して、すぐに直すつもりだったのでは?っていう付帯決議に見直すと書かれたのでしたっけ?
鈴木 そうですね。だから3年内に見直すって絶対に必要なことだと思っていました。過剰反応問題も出てきましたからね。運用をしっかり見て直すべきは直すのがあたりまえだと思っていました。ところが10年立法論は封印されてきました。ということでそうした流れを追認してきた某先生をかなり辛辣に批判してきたわけだけれども(笑)。大変申し訳なく思っていますが。改正に持っていくためには必要なことだと思っていました。
山本 あー。某先生ですね。
鈴木 ええ、某先生。かなりね、作っている途中に「あ、これ後で確認してから直さなきゃ」って論点が結構あったんですよ。で、3年内に運用しながら直す前提で作ったと思うのですよね、これ。でも、起草当初の担当官が、全員いなくなっちゃったでしょう?
山本 はいはいはいはい。
鈴木 そうすると、一掃されちゃうと、次の役人は全然わからないんですよ。だって、引き継ぎがほとんどないので。ファイルをドンと置いて3日でいなくなるような世界ですよね。
山本 ですね。
鈴木 改正の勘所がわからない。意見や批判を受け止めて適否を判断できない。落としどころを見極められないとなると、大臣に法改正の必要性など答申できなくなります。
山本 その当時はね。
鈴木 すると、委員の人選を吟味して法改正の意見ができないように調整するわけです。私は某団体から意見を具申する係として推薦されたのに、某庁から「おまえは来なくていい」っていわれましたね(笑)。お前の意見は知っているからと。あー、某省でもありました。当初の委員名簿案から削除とかね。
山本 いい話じゃないですか。
鈴木 ええ。もし起草メンバーがそのままいたならば、調整作業に果敢にチャレンジしたと思いますね。ある意味、人事の問題、構造的問題でしょうかね。結局、法改正はしないという方針の下に、10年間スルーされ続けて、過剰反応問題も、ポスター貼ったり、セミナーやったり、リーフレット作ったりみたいなところでごまかされてきました。いや、法律にも問題あるだろうと、少しは直せよっていう話は10年間黙殺でしたね。しかし、法改正反対のスタンスだった先生がですね。政府が法改正の方針だという流れが見えたとたんになぜか全員改正論者になっているっていうね…
山本 いい話じゃないですか!
鈴木 うん、いい話だなあって(笑)。専門家への信頼が地に堕ちていくわけですよ。
山本 そういう素敵な話を我々は求めておるのです(笑)。そのあたりの話をちょっと、後半、ぜひ、お話しさせていただきたく。よろしくお願いいたします。
―後編へ続く