db tech showcase Tokyoは今年で5回目。ほかに大阪開催が2回あるためdb tech showcase全体で見れば7回目となる。毎年恒例のイベントとして定着してきて、インサイトテクノロジー 代表取締役社長 小幡 一郎氏は「ここまできた」感があるようだ。
小幡氏は「日本で開催されるIT系イベントは海外イベントの資料をただ翻訳した程度の発表が多い。それじゃ面白くない。(本物は)そんなんじゃない」と熱く語る。エンジニアは本当に詳しい専門家の生の声を、実直な体験談や技術解説を聞くべきだというのが同氏の信念だ。
この不満がきっかけとなり、2011年、小幡氏はイベントをみずから開催することにした。小幡氏の編み出した秘策はOracle ACE Directorを招くこと。Oracle ACEはオラクル関係の技術で執筆や講演活動が認めらると与えられる称号だ。Directorとなると出張費などに使える予算も与えられる。そこに目を付けた。Oracle ACEなら招けば来てくれる。当人たちにとっては実績になり、称号を継続するにも役立つからだ。
実は小幡氏もOracle ACE Directorだった。しかし近年、主催側に専念することで小幡氏自身の講演機会が減り、結果的に「Director」から外れたそうだ。小幡氏はまだ出たいらしくイベント担当者に「今回、ぼくの枠はないの?」と聞くものの、担当は「ほぼ埋まっています。予備の候補にはありますが、埋まったらありません」ときっぱり。小幡氏、肩を落としてちょっとさみしそう。主催者としては講演者が多いのは喜ばしいことと言えるだろう。
イベントは年々規模を拡大している。セッション数は昨年の80から今年は91。3日間、4トラック同時開催という構成だ。Oracle関係は海外からのOracle ACE Directorがずらり。実直で詳しいオラクル技術解説で定評があるTom Kyte氏は2度目の参加となる。小幡氏曰く「Tom Kyteはエバンジェリストの先駆け」。
Oracle以外でもあらゆるデータベース製品の専門家が多く講演する。商用データベースベンダー、オープンソースコミュニティ、ユーザー企業、あらゆる立場、あらゆる視点で情報提供される。「データベース」をキーワードにこれだけ多彩なメンバーが集うのは本当に貴重な機会となるだろう。それでも小幡氏は「まだ呼べていない人がいる」と招聘にさらなる野心を抱く。
「(あらゆることに万能な)スーパーウルトラデータベースなんてこの世にないんだから(適材適所が大事)。db tech showcaseではいいところも悪いところも余すことなく開示する。ユーザーの立場で徹底的に検証したセッションなんて面白いと思うよ」(小幡氏)
小幡氏が言うように、ユーザー事例には力が入っている。Room Cはほぼユーザー事例で埋まっている。例えば「C24 カラムナデータベース徹底比較」はサイバーエージェントが自ら複数のカラムナデータベースを徹底的に比較した結果を開示する。また「C11 NVMFS + MySQL で実現される高パフォーマンスDBソリューション」もサイバーエージェントとサンディスクがゲームのプラットフォームにおける事例を紹介する。なおサイバーエージェントは今回初参加となる。
今回は初参加が多い。日本センチュリーリンクとネットプロテクションズはオラクルを活用した決済サービスの高速化事例、DoBokenはMongoDBのアンチパターン、BashoジャパンはRiakについて紹介する。ユーザーコミュニティだと日本Hadoopユーザ会、日本MySQLユーザ会、日本MongoDBユーザ会、PostgreSQLエンタープライズ・コンソーシアムがそれぞれ初参加となる。
今年の技術トレンドはあるかと小幡氏に尋ねると「トレンドになるころの技術では遅い」と一蹴。流行におもねることはしないのもこのイベントのストイックなところかもしれない。小幡氏は「エンジニアには見聞を広めてほしい。世界の広さを知ればイマジネーションが広がるから」と話す。
イベントは事前登録をすれば無料(当日参加は5000円)となっている。小幡氏は「本当は有料にしたいんだよ。ガラガラになってもいい。有料でも聞きに来るような人がガンガン質問するようなほうがいい」と話す。広く浅くより、濃いセッションとなるものを目指している。
「来年は有料にするかもしれないからな!だから来いよ!」と小幡氏は気勢を上げる。
なおイベントを支えるマーケティングチームには若手も多くいる。なかでも早津あいみ氏(写真左端)は若手ホープ的な存在だ(この表現、古いかも)。最近は出張でドバイを訪問したそうだ。インタビュー中も小幡社長に冷やかされたりしながら、仕事も上司とのつきあいなど幅広く学んでいるところ。
毎年db tech showcaseではスタッフがコスプレをしたり、ラウンジに面白いしかけをしたりする。現時点では若手スタッフ中心に絶賛検討中のようだ。きっと盛り上げてくれるに違いない。