外資系ITベンダーで社長交代が相次いだ
2014年12月の衆院選では、驚きの交代劇はほとんど見られなかった。しかしながらIT業界に目を向けてみると、2014年は外資系IT企業のトップ交代が相次いだ年となった。
まずは、3月に日本HPの社長を退任した小出伸一が、4月にセールスフォース・ドットコム日本法人の代表取締役会長兼CEO(最高経営責任者)に就任したのには驚かされた。長く社長を務め日本法人の成長を牽引してきた宇陀栄次氏は社長を退任、日本法人の前シニア・バイスプレジデント兼エンタープライズ営業担当であった川原 均が同社の取締役社長兼COO(最高執行責任者)に就任。ちなみに、このタイミングで取締役相談役となった宇陀氏だったが、その職も年内で退任することになるようだ。
2013年8月に突然の退任となった日本オラクルの遠藤隆雄代表執行役社長、その後は日本をよく知るデレク・エイチ・ウイリアムズ氏が、一時的なリリーフ役として社長を務めてきた。5月からの新年度を前に、2014年4月には元日本HPのサーバー担当責任者だった杉原博茂氏が代表執行役社長 最高経営責任者(CEO)に就任した。日本法人社長となる前に、米国Oracleで十分なコネクションを作ってからの就任となり、早くから本社の戦略を十分に理解し、むしろ米国に先駆けて「クラウドでNo1になる」という目標を掲げたことは記者には新鮮に映った。
5月にシマンテック日本法人の社長を退任したのは河村浩明氏だ。その後、河村氏は9月に設立されたDropboxの日本法人社長に就任している。ベンチャー的なイメージの強いDropboxでどのような手腕を振るうのか、今後の動きが気になるところだ。
6月にはアドビシステムズの日本法人社長だったクレイグ・ティーゲル氏が退任を発表。翌月新たな社長に就任したのは、日本マイクロソフト、米マイクロソフトに在席しマーケティング分野の経験値が高い佐分利 ユージン氏だった。クリエイティブ製品中心の戦略からデジタル・マーケティング関連のソリューションにシフトするアドビの、変化を象徴する交代劇だ。
7月いっぱいでSAPジャパンの社長を退いたのは、安斎富太郎氏。後任社長は、1997年4月にSAPジャパンに入社した若手、福田 譲氏が抜擢された。若さもさることながら、外資系ITベンダーで生え抜きの社長というのには、業界関係者も驚かされた。福田氏の年上となるようなSAPジャパンの既存社員から、彼を支えていく的なメッセージが多数聞こえてきたことは興味深かった。
11月には、シスコシステムズの代表執行役員社長である平井康文氏の退任が発表。後任の社長人事はまだ発表されていない。日本IBMのマーティン・イェッター社長も2015年1月からは米国本社上席副社長になり、日本法人の社長から退くことが発表されている。日本IBMもまた、現時点で後任社長の人事は発表していない。
改めて振り返って、交代劇の多さにちょっと驚いた。交代原因はもちろんさまざまだろう。決して業績不振だけが原因でもなさそうだ。1つあるのは、クラウド、ソーシャル、モバイル、ビッグデータといった新たなキーワードの元に始まっている新しいITの世界において、新たなリーダーが求められていることは確かだろう。経験豊かな社長にそのまま交代したケースもあれば、期待の若手へのシフトも見られる。兎に角、トップ交代という形で自らの変革を示すのだという思いは伝わってくる。日本のITベンダーも社長交代をとは言わないが、時代に追随する新しい経営体制へと大きな変化が求められているのは確かだろう。