翔泳社が7月16日(木)に刊行した『絵で見てわかるWindowsインフラの仕組み』は、企業向けのシステムをほぼすべて実現可能なWindowsの全体像を俯瞰した解説本です。一読すればWindowsのシステムインフラにはどんな機能があり、何が用意されているのかを把握することができます。
システム構築を仕事にする方にとって、クライアントからの要望が必ずしも自分の得意な開発環境に合致するとは限りません。例えばLinuxを使っている方がWindowsでの開発をしなければならなくなったとき、困るのはLinuxの機能がWindowsに用意されているもののうち、どれに対応しているのかすぐに分からないところでしょう。
そうした問題に直面したとき、Windowsの地図として役に立つのが本書です。今回、担当編集の石川に、本書の狙いや内容を詳しく聞きました。
どんな開発環境の人でも、Windowsの全体像を把握できるように
本書の大きな狙いは、ある企業のシステムをWindowsで作らなければならなくなったとき、「これとこれがあればできるな」と瞬時に見当がつくようになってもらうこと。では、どういう人にとって、本書が描くWindowsの地図を頭に入れておくことがメリットとなるのでしょうか。
本書を読んでいただきたいのは、システム構築の仕事をし始めたばかりの方や、いままでLinuxで仕事をしていたのでWindowsには詳しくない方、Microsoft SQL ServerやActive DirectoryなどWindowsで使える技術の一部だけを使っている方など、Windows全体をきちんと把握できていないという方です。
現実にはWindowsだけでしかできないことはほとんどなく、LinuxやUNIXなどでできることもたくさんあります。ですので、必ずしもWindowsを使う必然性はありません。しかし、これはMicrosoftの特徴ですが、データベースにしろウェブサーバーにしろ、またはメール配信にしろ、Microsoftには何かしら必ず対応するサービスや製品があるんです。それもフルスタックで用意されています。
ということで、さすがに知らない方はいないと思いますが、ウェブサーバーのApacheに対応するものは何だっけ、と思ったとき、Windowsにはインターネットインフォメーションサービス(IIS)があることを知っておけば、スムーズに業務を始めることができます。あるいは、業務でWindowsを使わない方でもIISの利点を押さえておけば、案件ごとにApacheと比べてどちらを使ったほうがよいのか判断できるようになります。
OSとしてのWindowsの歴史から、製品の一覧まで
本書ではまず、OSとしてのWindowsの歴史を眺め、Windowsの構成要素を知り、なぜ動くのかを解説します。そのあと、サーバー技術や各製品、開発技術などを紹介。これ1冊あれば、Windowsがどういう仕組みで動き、何ができるのかを手軽に理解することができます。
第1章から第3章まではWindowsの特徴をまとめているので、LinuxやUNIXなどとの違いがどこにあり、長所と短所は何なのかをざっと一望することができます。
具体的に「第1章 Windowsをとりまく環境」では、OSとしてのWindowsの歴史、技術的な特徴をまとめています。昔のWindowsの画面も掲載していますので、懐かしがってもらえるかもしれません。GUIに優れたWindowsですが、若い人にはこういう時代もあったのだと知ってもらえるでしょう。
「第2章 Windowsの構成要素」は、Windowsの要素を静的な観点で説明しています。つまり、そもそもどういった要素があるのか、ということですね。それらを知ってもらうことで、「第3章 Windowsが動く仕組み」が理解しやすくなります。ここでは第2章で述べた要素がどう動いているか、Windowsがプログラムをどう走らせているかを説明しました。
第4章から第8章までで、Windowsで使える製品や技術を解説しています。「第4章 サーバー技術」では、WindowsはOSの機能だけでは業務を達成できないことから、Microsoftが用意しているサポート的なツールを概観しています。Microsoft SQL ServerやActive Directoryといった製品がどういうものなのかをまとめてありますね。「第5章 主な製品」では日常業務で使われているOfficeなどアプリケーション系の製品、あるいはHyper-Vという仮想化システムなどを扱っています。
「第6章 クラウド」ではOfficeのクラウド版であるOffice360と、Microsoft Azureというクラウドサービスの全体像を説明しています。競合はAmazon Web ServicesやIBMクラウド・コンピューティング、その他の国産クラウドなどで、いままでMicrosoftが戦ってきた相手とは色合いが違いますから、そこでMicrosoftがどう対応しているのかが分かると思います。
「第7章 開発」では定番のVisual Studioなどのソフトウェア開発技術の一覧ですね。「第8章 その他の技術」は、ほかの章には入らないけれど重要と思われる技術、例えばDirectXや、ほかにWindows10の最新状況について書いています。
地図を手にしたら、次の一歩を踏み出そう
本書『絵で見てわかるWindowsインフラの仕組み』はWindowsのシステムインフラを概観する地図ですので、ぜひ次なる一歩として各サービス・技術の解説書を読んでいただければと思います。
SQL Serverの解説書であれば、同じシリーズの『絵で見てわかるSQL Serverの内部構造』がありますし、アプリケーション開発であれば『Visual Basicの絵本』などがあります。本書も含め、それぞれ執筆いただいている株式会社アンクの皆さんは翔泳社ともお付き合いが長く、特にWindowsに強い方々なので自信をもっておすすめできます。
本書は手軽に読めることを目指した、ありそうでなかったWindows全体像の解説本です。「これってWindowsだとどのサービスでできるんだっけ?」と思ったときに開いてみてください。もちろん、改めてWindowsのシステムインフラを概観したい方にも読んでいただければ嬉しく思います。