学んだのはプラットフォーム上で使われている顧客のデータがもっとも重要だということ
Q:Salesforceのファミリーに加わり、Herokuはどのように変化しましたか?
バガイ氏:この4年あまりでエンタープライズの顧客要件について理解を深めてきました。その結果Herokuでは、大きなチーム体制で開発する場合の管理を容易にし効率化する拡張をしています。たとえば、開発チームの中で権限を設定しアクセスコントロールを行い、誰がどんな作業をするかを規定できるようになっています。チームの中にはステージング環境で作業ができればいい開発者もいれば、本番環境にアクセスする必要のある開発者もいます。それらをきちんと分けてコントロールできます。
また、ユーザーが個人ではなく企業の場合は、SLAのあるサポートも求められます。そのための拡張サポートも用意しています。これを利用すれば、たとえば24時間、週7日の対応で、専門のアカウントマネージャを設置する対応ができます。セールスフォース・ドットコムにとって戦略的なパートナーとなる顧客には、こういった体制でのサービスも提供しています。
さらに、日本についてもHerokuのサポート体制は強化しています。専任のプリセールス、ポストセールスサポートのメンバーがおり、もちろん日本語での対応が可能です。
Q:Herokuのデータストアの進化についても教えてください。
バガイ氏:6年前の最初のHerokuでは、Webアプリケーションで必要となるデータハンドリングができれば十分でした。そのために用意したデータベースがPostgreSQLです。PostgreSQLは優れたデータベースで、信頼性も高い。とはいえ、現状のすべてのニーズにはなかなか応えられなくなっています。
データストアとしては今、インメモリーデータベースの要求が高まっています。それに対応するためにHerokuでは、MemcachedやRedisを用意しています。Redisは今やほとんどすべての顧客にとって重要なテクノロジーです。特に大手の顧客は、Redisに対する高い期待があります。RedisとPostgreSQLを上手く組み合わせることで、今日のWebアプリケーションにおけるデータストアへの要求にはほぼ応えられると考えています。
Herokuがセールスフォース・ドットコムのファミリーになって学んだことの1つが、プラットフォーム上で使われている顧客のデータがもっとも重要だと言うことです。Herokuのデータサービスは、セールスフォース・ドットコムが運用するようになりより開発者に使いやすいものになりました。そういった進化を通じ、開発者の経験値をより高いものにするのがHerokuのミッションでもあります。
Q:メモリ上のKey-ValueストアであるRedisに力を入れているのは、今後拡大するIoTへの対応などを見据えてのことですか?
バガイ氏:Redisの活用は何もIoTに限った話ではありません。Redisに注目が集まっているのは一般的なトレンドだと言えるでしょう。IoTの運用を考えると、確かにほぼリアルタイムに低遅延で処理したいとの要求があります。もちろんそういった要求にもRedisは応えられます。また、さまざまなデータの可視化を素早く行うとの要求にもRedisは向いています。
Q:開発者にとってHerokuには永続性ファイルがない点が使いにくいとの声もあるようですが?
バガイ氏:永続性についてはブロックストレージではなくPostgreSQLでより強力なメカニズムが提供できると考えています。Herokuとしては、ブロックストレージよりはオブジェクトストレージを指向しています。ただし、アプリケーションを構築する際に画像や映像などのデータを扱いたいとの要求があり、その際にはファイルシステムが欲しいのも分かります。これについては、Herokuでは積極的にAmazon Web Services(AWS)のS3などのサービスと連携できるようにしています。
HerokuはもともとAWSのプラットフォームレイヤー上にあるサービスで、Herokuのアプリケーション自体もAWSの上にあります。そういうこともあり、AWSのサービスとHerokuを組み合わせたハイブリッド型の利用はすでに数多くあります。AWSとの連携は我々も興味を持っており、今後も強化していく予定です。