地方でのテレワークは地方の仕事を奪うものではない
ITを使ってテレワークを実現できれば、都会にいるのと同じような仕事環境が地方でも構築できる。これ、IT業界にいる人ならば当たり前だろう。日本中どこに行っても今ならインターネットに接続できる。テレビ会議のシステムもかなり安価に導入でき、音声、映像を使ってリモート接続するだけでなくPCのデスクトップを遠隔地と共有することも難しくない。さらに今はクラウド時代。これまでなら社内のローカルサーバーにしか置けなかったアプリケーションも、そのほとんどが今はクラウド上で動く。アプリケーションがクラウドにあれば、インターネットに接続できればどこにいてもそれを利用できる。
このように、技術的には地方でテレワークを実現するインフラが整ってきた。しかしながら、今ひとつテレワークが根付いていないのはなぜだろうか。根付いていないからこそ、今回のような総務省による地域実証実験が行われる。今度こそ地方でのテレワークを根付かせる、そんな意気込みで実証実験に参画しているのが、クラウドベンダーのセールスフォース・ドットコムだ。実際に和歌山県白浜町に「白浜オフィス Salesforce Village」を開設し、地方でのテレワーク活用に本格的な取り組みを開始したのだ。
セールスフォース・ドットコム 代表取締役会長兼CEOの小出伸一氏は「クラウドは、いつでもどこでも誰でも使えます。企業規模を問わずに使えます」と言う。このクラウドを活用できるからこそ、白浜オフィスを開所するところまできたのだと。セールスフォース・ドットコムは、誰でもITを利用できる「ITの民主化」をリードしてきた企業であり、東京ではなくても働く場所を提供できることを証明すると言う。そして「白浜すばらしい環境です。ITインフラも整っており、Wi-Fiも充実しています」とのこと。白浜町から提供されるホスピタリティも高く、白浜をテレワークオフィスにしたことは正解だったとも言う。
セールスフォース・ドットコムを受け入れた白浜町の町長 井潤 誠氏は、白浜町ではこれまでも企業誘致には力を入れてきたと言う。そのためにITオフィスを町でも作ったが、5年間入居する企業は訪れなかったのだとか。それが今回のセールスフォース・ドットコムの実証実験への参加を機に、セールスフォース・ドットコムのパートナー企業であるサンブリッジ、日本技芸、ブイキューブ、ブレインハーツの4社も白浜でテレワークを開始することとなった。結果的には7社がITオフィスに入居し空きスペースは残り1つになり「ITオフイスは大きな変貌を遂げました。今や、たくさんの人が働く場となっています。町を挙げ、誘致企業を歓迎します」と井潤氏は言う。
総務省 情報流通行政局 情報流通振興課 課長の今川拓郎氏は、今回の取り組みについて次のように言う。
「テレワークはこれまでそれほどうまくいっていません。大手は一部進んでいますが、中小企業はまだまだです。一方で外資系企業は進んでいます。進まない原因の根底にあるのは、顔を付き合せないとダメだとのマインドがあることです。それを払拭する必要あります。意識を変えることが地方活性につながります」
ここ最近になり、テレワークへの大きな動き生まれている。テレワークが働き方の多様性を実現し、女性の活躍にとっても、地方創成にとっても重要になると指摘する。今川氏はもう1つのポイントとして「ふるさとテレワークは、地方でも東京の仕事をそのままやることです。地方の仕事を奪うのではなく、地方創成の有効な方法になります」と指摘する。そして「白浜プロジェクトを、観光リゾートでの成功モデルにしたい」と言い、環境の良いところで都会と同じ仕事できるメリットを強調した。