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ITは本当に世の中の役に立っているのか?そもそもITなんていらないのではないか?……といった本質的な問いを胸に秘めながらも、第一線で活躍する二人のIT屋が、バズワードについて、Slerの幸せについて、データベースについて、クラウドについて、エンジニアのキャリアパスについておおいに反省したりしなかったり……エンタープライズITの現場の実情が立ち上る生々しい対話です。
Webでは読めない、神林飛志さん、井上誠一郎さんによる渾身のオリジナルまえがき、あとがき付き!
ぜひご反省ください!
【前号までのあらすじ】
編集部 そろそろビジネスの話を……。
井上 ビジネスの話。
神林 結局、ビジネスだと最大手のOracleどう思いますかって話ですよね(笑)。これは聞きたいですよね、やっぱり(笑)。
寡占状態のほうが楽だけどつまらない
神林 これは業界では有名な話で、ワークスさんの某アプリケーション、基幹になるものはOracleべったりでございます。ストプロをバリバリ使いまくりでっていう時代があったんですけどね(笑)。
井上 それはどこから情報がいっているのか知らないですけど(笑)、ストアドプロシージャ、実はなくしています。
神林 あー、すごいですね。
井上 むしろその内情はどこからでてきたんですか(笑)。
神林 別のところからいろいろ……
井上 実は一番最初はOracleじゃないんですよ。あと、ストアドプロシージャはべったり過ぎるので結構な長い時間をかけて減らしています。
神林 で、今回のCassandraっていう話が……
井上 ええ、Oracleと決別。
神林 Oracleが嫌いなのかっていう話ですか。高すぎて嫌になったのか。
井上 うーん……これにはいろいろな要因があると思いますね。まぁ…いろいろと。
神林 結局僕らのDB業界って……僕らって言いましたけど、僕が入っているかどうか微妙なんですけど(笑)、Oracleって一部のユーザーさんから“アロガント”な会社、“アロガント”という英語の形容詞が使われちゃうくらいの強い会社で、結局、読売巨人軍みたいな存在なんですよね。特にDB業界でのビジネスって面でいうと。
井上 アロガント、つまり傲慢、ですね。
神林 そうですね。ユーザーさんに言わせれば、たとえばサポートの値上げを1年に2回やってしまうとかありえないとか。ユーザーさんからしたら、予算で決まっているんだから途中で上げられたって困るのはわかるだろうって話みたいで。そういうところが、あまりユーザーフレンドリーじゃなくて、独占を盾に取れるものは取るという風にみられるところがありますね。現実に傲慢か?という議論とは別に、やはりナンバーワンというのは風当りが厳しい。
井上 でしょうねえ。
神林 ただ一方で、Oracleをどうしても使わなきゃいけない、使いたいっていう人もいる。それはRDBに関して言えば、やれることはほぼすべてやっていて、非常に使い勝手がいい。だからどうしてもOracleがいいっていう人もいて。これは選択肢が少ないという意味であまり健全ではない。
井上 そうですね。
神林 昔はRDBはたくさんそれなりに種類があったのに、今はどんどん減ってしまって、サイベースですらなくて、いま、SQL ServerとOracleくらいしか……
井上 DB2がありますよ。
神林 まあ、5個か6個あったのが半分くらいになってしまっているのが現状で、あんまり寡占化がこれ以上進むっていうのはRDB業界としてはあまりいいことではないのかなというのがあります。その一方で、ソフトウェアに対してお金を払わないという文化があるのであれば、それから産業を守るために寡占化して、取れるところから取ってこいというのは、それもありといえばありかなというのはあって、その意味では寡占化やむなしって考え方もあるわけです。それが今、瀬戸際というか、綱引きをやっているという印象です。
井上 だれとだれが綱引きを?
神林 ユーザーとベンダーが。ユーザーさんから見ると、寡占化はやだけど、Oracle以外から買いたくないというのも多かったりして、そこらへんがどうもすっきりしない(苦笑)。
井上 まあ、そうですね。難しい問題。あまり結論は出ないですけど、OSだって、みんなWindowsを使う。ある意味、楽といえば楽ですよね。実は寡占したほうがユーザーにとっては楽な世界もある。トータルで見たらもしかしたら得をしているかもしれない。ただ、これは個人的な意見ですけど、それもつまらないので壊してもいいかなと思います。
神林 多様化という意味ではつまんないですよね。なんでもOracleになってしまう。ちょっと良くないなと思うのは、Oracleが売り上げをどんどん上げていかねばならなくなり、いろいろM&Aしました。で、買ってどうなったかというと、たぶん儲かっていない。もともと行き詰まって、結局身売りになっているわけで。そいつをOracleが買ったからといって売れるかというと、そうそう簡単に売れるわけではない。そうすると、その赤字の穴埋めにOracleDBの値段を上げますという話に、結果としてなってしまっているのではないかと思います。仮にそうだとOracleユーザーは、本来つぶれて淘汰されなければいけないもののコストを払っているという形になってしまっていて、正当な対価でやりとりをするというビジネスの基本からずれてしまっているような気がします。Oracleにしても金がほしくてやっているという側面もあるとは思うんですけど、むしろ全体として食わせないといけないっていうのがあってやっているのが実態に近いんじゃないかな。それで、それができてしまっている。そこがRDBでナンバーワン、オンリーワンになりつつあるというのは市場にはあまりいい影響はないような気がします。
井上 前回の話と同じで、IT固有、DB固有の問題なのかっていうと、そうでもない。いったんデファクトになると、使う側は実は楽だし、トータルで見ると得をしている、まあ、今の話だと得じゃないところもあるかもしれないんですけど、意外とプラスマイナスでいうとプラスかもしれない。でも、それだとつまらないので、変わってほしいかなと思うので、変えたいと思う人は先陣を切って何か変えていくしかない。
神林 結局、DB業界全体として、どうやってOracleを出し抜くかみたいな話になっているフシがありますね。一強とそれ以外。そこがDBのビジネスシーンとしては明らかに20年前とは違う形になってきている。
やっぱりDBも含めて、Oracleのプレゼンスが、いちばん大きくなったのがSunの買収です。ある意味OracleとSunって文化的に対極だったところはあって、DECとCompaq並のインパクトがあったのはまちがいない。結果として、Sunの文化はやはり消えつつある。Sun由来のいろいろなものにOracleの名前を付けてしまうんだけど、そもそも何をしたかったのかが結局、見えにくくなる。正反対の文化をもってくるとき、それをうまく尊重してやるっていうんだったら意味があるじゃないですか、多様性の維持を中に持つとか。でも、そういう発想がいまひとつ見えない。
編集部 なぜSunを買収したんですか?
神林 ハードがほしかったというのが、まず一般によく言われている話。
井上 ハードの部分では一定の成果を上げていますよね。
神林 エクサがあれだけ売れていますからね。それはある。ただ、Solarisは、がんばっているんだけどいまいち……
井上 誰ががんばっても、結局Linuxの世界に勝てる気がしないですね。
神林 というわけで、いろいろまわりまわって…閉塞感がRDB業界にでてきてしまっている。
井上 それはそうですね。
神林 そこがねえ、もう限界じゃないって。
井上 行動を起こせる人が何かするしかないですかね。単体の企業だけだと、まあ単体の企業もがんばればいいんですが、まあ、これあまり幻想を抱くと噛みつかれるかもしれないですけど、オープンソースから……
神林 オープンソースでしょうね。ただRDBのオープンソースという意味だと……
井上 RDBでなくてもいいかなと。Cassandraも含めて。