アメリカでDellがEMC買収を発表したのは2015年10月、買収額は670億米ドル。その後、2016年9月には当初の予告通りに買収を終え「Dell Technologies」が誕生した。今回の「Dell EMC Forum 2016 Tokyo」は買収完了後、日本では初の大々的なイベントとなる。
基調講演冒頭には日本法人の両社長、デル 代表取締役社長 平手智行氏とEMCジャパン代表取締役社長 大塚俊彦氏が並んで挨拶に登壇した。合併後の会社概要を平手氏、事業内容を大塚氏が分担して解説した。
平手氏は合併で誕生したDell Technologiesについて「卓越した実績を誇る世界最大の非上場ハイテク企業グループ(ファミリー)」と言う。売上は740億米ドル、社員14万人。IT業界でこの規模はアップル、マイクロソフト、IBMなどと限られるため、まさに世界屈指のIT企業グループとなる。非上場なら確かに世界最大だ。(参考:基調講演会場で流れていた合併を象徴する動画 Joining Forces: Introducing Dell Technologies)
新たなDell Technologiesは7つのブランドを持つテクノロジー企業グループとなる。大きく分類するとDellとDell EMCがハードウェア、VMwareが仮想化、Virtustreamがクラウドサービス、PivotalがPaaS、RSAとSecureWorksがセキュリティとなる。新企業グループとしてはモダンITの構成要素を網羅したという認識だ。
基調講演のメインはDell EMC シニアバイスプレジデント ブライアン・ギャラガー氏が務めた。過去のEMC Forum Tokyoでもたびたび来日してEMCの技術を解説してきた人物だ。ギャラガー氏は両社の合併だけではなく、いま起きている技術革新についても「とてもワクワクしている」と満面の笑みで余裕を見せた。
今同社が見据えているのは「デジタルトランスフォーメーション」と呼ばれる変化への適応だ。タイトルで「Let the transformation begin」と掲げるように、技術で新しい変貌を遂げるようにと促す。現在起きている変化に対応し、成功するための鍵として、ギャラガー氏は「人材」、「セキュリティ」、「IT変革」の3点を挙げた。
まず人材。人材に最大限の力を発揮してもらうためにユーザー体験を最新鋭化すること。特に若い世代が存分に力を発揮できるように時間や場所に制限されないような働き方を提供すること、エッジ(末端)にも判断権限を与えていくことが意思決定を早めていくために有効だとギャラガー氏は説く。
次にセキュリティ。技術が最新鋭化し、新しいことができるようになればなるほど、裏ではリスクも高まる「諸刃の剣」でもある。今はスマートフォンやIoTなど多様なエンドポイントが企業につながっており、企業の内外を隔てるFirewallがあれば企業を守れるという時代ではない。ギャラガー氏は「セキュリティはビジネスの価値を促進しなければならない」と話し、ビジネス状況とセキュリティ情報を結びつけること、脅威情報や分析を通じ状況把握を強化し、リスク監視体制を指揮していくなどのポイントを挙げた。
それから最も重要になるのがIT変革。ギャラガー氏は「ムーアの法則はまだ生きている」と話す。集積回路の複雑性が1年~1年半で倍になるという「ムーアの法則」は世に出てから50年余りが過ぎるが、今でもIT業界ではその勢いを保ち成長を続けている。「5年で10倍」なら15年で10倍の3乗なので1000倍だ。これだけ性能や能力が向上すれば、様々なところで変化が起こりうる。
これまでの15年はIT技術中心で、トランザクションやレポートが重視されていた世界だ。従来型の投資はいまピークにあるが、今後は最適化により減少していくとみている。一方、これからの15年はビジネス中心へとシフトし、クラウドネイティブのアプリケーションが増え、ストリーム処理や分析が重視され、投資もそうした方向へと向けられる。
ただし現時点では従来型と次世代型となるクラウドネイティブの両方が共存する過渡期であり、バイモーダルな状態だ。そうしたなか、Dell EMCは双方に対応できる製品を揃えているという自負を見せる。特にVMAX、XtreamIO、Unityなどストレージ領域がEMCからの強み。
同日は長い実績を持つVMAXでオールフラッシュとなる「Dell EMC VMAX 250F/FX」、新しい「Dell EMC Data Domainアプライアンスファミリー」、「Dell EMC PowerEdge」サーバーを統合したハイパーコンバージドシステム「Dell EMC VxRail」と「Dell EMC VxRack System 1000」の販売開始も発表した。
Dell EMCは合併でモダンITの構成要素を網羅し、規模で相乗効果を高めていくことを狙う。ギャラガー氏は最後に非上場のメリットとして「顧客のための長期的な技術開発に投資を向けられる」を挙げ、今後は「顧客のデジタル変革への旅を支援していきたい」と話して締めくくった。