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ITは本当に世の中の役に立っているのか?そもそもITなんていらないのではないか?……といった本質的な問いを胸に秘めながらも、第一線で活躍する二人のIT屋が、バズワードについて、Slerの幸せについて、データベースについて、クラウドについて、エンジニアのキャリアパスについておおいに反省したりしなかったり……エンタープライズITの現場の実情が立ち上る生々しい対話です。
Webでは読めない、神林飛志さん、井上誠一郎さんによる渾身のオリジナルまえがき、あとがき付き!
ぜひご反省ください!
ユーザーサイドのエンジニアが生き残るためには
編集部 最終回は、エンジニアのキャリアとか、そういう話を。ご自身のエンジニアとしての経験っていうのもあるでしょうし、あとは二人とも率いていく立場として考えていることっていうのもあると思うので、その2つの側面からキャリアについて語っていただければと思っています。
神林 そういう側面とは別の2つの見方があって。立場が違っていて。井上さんのほうはどっちかっていうと、作る側のエンジニア。ベンダーサイド。僕のほうはエンジニアっていってもどちらかというとユーザーサイド。ユーザーサイドのエンジニアのキャリアっていうのはすごく今、問題ですね。両方語れるんですけど、僕のキャリアとして長いのは、あ、そうか、もうそろそろベンダーと同じくらいになっちゃうのか……最初の、初期の頃はユーザーのほうなので。やっぱり、ユーザーサイドのエンジニアのほうが、まあ、恵まれてはいないですよ。
編集部 恵まれていない。
神林 恵まれてはいない。間違いなく。理由は簡単で、ユーザー企業の中ではITの部署っていうのは傍流っていうか間接部門ですよね。その中のキャリアパスっていっても、どうしても会社としては作りづらいというのが実態になりますね。そんな中でどうやって、生きていくかっていうのがあって、方向としてはやっぱり、当然ユーザー企業なんで、考え方としては大きく2通りあるのかな。ユーザー企業の中であくまでがんばるっていう場合であれば、一つはどう出世するかっていう話がありますね。もう一つは、出世はもうあきらめるけど、どうやってユーザー企業の中でがんばっていけるかっていう、その2つのオプションがふつうはあるはずで。出世するんであれば、基本的にはITだけやってたらたぶんだめですよね。だから他の業務系もマスターするとか、営業やるとか、製造系回るとか、あるいは商品部とか、マーチャンダイジングやるとか、そういうところを経験していかないといけないので、これはもうITのエンジニアのキャリアではないですよ。どちらかとユーザー企業のマネジメントになるっていうキャリアになるので、そういう目線でITのエンジニアのキャリアをどう考えるかっていうと、簡単でして、やはりプロジェクトマネジメントなんですよ。この技能だけは、僕もいろいろな部署を回ったんですけども、ITが一番、定式化されています。要はプロジェクトマネジメントという意味で。ITとは別にもう一つそういったプロジェクトマネージメントに秀でているところもあって、建築とか開発とか設備って言われるところですね。コンストラクションなんですよね。プラント作るとか、なんらかの建物を作るとか、そういう場合もプロジェクトマネジメントになるんですけど、要するにちゃんとWBSを引いて、課題を見ながら進行をみてチェックをして……という形のものを作り上げる。建物を作るとかですね。そういうものは同じになります。逆に言うとそれくらいしかなくて、他のところは割とプロジェクトマネジメントっていう意味だと、やるにはやっているけど、あまり定式化はされていない。たとえば商品開発やるっていったら、当然プロジェクト立ち上げるんですけど、割といい加減です、そこは。
井上 一般的にはソフトウェアはだめなほうという印象もあるのかなと思いますが、そうでもないですか?
神林 えーとね、他と比較すれば全然まともですね。
井上 なるほど。
神林 たとえば、PMBOKみたいなものないですもん。他で、じゃあ人事系でモチベーション上げるプロジェクトをやりましょうっていったときにそのやり方って、どうやってマネジメントするのっていうところに教科書ないですよ。そういう意味だとIT側のほうはプロジェクトマネジメントをどうするかということについてのそもそも学問があったりするので、それをちゃんとやっとくっていうのは、非常に他の部署に回ったときのプラスにはなるので、そういう方向に勉強したほうがエンジニアとしてはユーザー企業の中では潰しがきく。で、そうじゃなくて、マネジメントはあんまりやらずにその中で生きていきたいっていう話であればですね、もうこれはポジティブな考え方にはならないので、否定はしないけれど……。