管理職はメンタルヘルスについて学ばなければならない
うつ病に代表されるメンタルヘルス不全という概念は、すっかり社会に定着した感があります。しかし、一般の人々が正しい知識を習得したとか、職場で十分な理解が得られるようになったなどと言われれば、ちょっと疑問符が付くのではないでしょうか。言葉こそ認識されるようになりましたが、具体的な中身については依然として知られていない、というのが現実でしょう。
もっとも、人間は自分自身がそのような状況に置かれない限りは、敢えて新しいことを学ぼうとはしないものですから、それが問題だということはできないでしょう。開発現場のエンジニアが、自分の健康に興味を示さず、ついついムリをしてしまうのはある意味仕方の無いことだと言えるかもしれません。
ただし、管理職やプロジェクトマネジャー(以下、PM)となれば話は別です。なぜなら、皆さんは職場やプロジェクトに属しているメンバーに対して、指示を出す立場にあるからです。皆さんがメンタルヘルスについて正しい知識を持っていなければ、知らず知らずのうちに部下の健康を害してしまうかもしれません。
例えば、プロジェクトでは開発メンバーがPMの指示に逆らうことは基本的にできません。皆さんが進捗状況などをチラつかせながら無茶な指示を出せば、彼ら自身がどれほど体調に気を遣っていても、病気を患ってしまう可能性があるということです。
非常に残念なことではありますが、今でも「うつ病は気合いの問題」「心の病は甘えだ」といった持論をかざす管理職も少なくないと聞きます。このような発言は、メンタルヘルスについての認識不足からくるものです。部下の健康侵害を回避するためには正しい知識を持っておく必要があるのです。
さらに、最近ではPMに対して、メンバーの健康管理を要求する風潮が強まっています(中央労働災害防止協会2005年度職場におけるメンタルヘルス対策のあり方検討委員会報告書)。つまり、皆さんが本当に作業を強いるでも無く、彼らが自主的に無茶をしている場合でも、皆さんはそれを察知して適切な休息をとらせる必要があるということです。
そのためには、「心の病気」がどのような特徴を持っているのか、どのような経過を辿るのか、といった情報が必要ですね。もちろん、メンタルヘルスに対して正しい知識を持つことは、皆さん自身の健康を守ることにもつながります。今回は、ITエンジニアをとりまく環境と、メンタルヘルスを損ねる原因となる要素についておさらいすることにしましょう。