マイナンバーとマイナンバーカードは違うもの
既に多くの人たちが、勤めている会社にマイナンバーを提出したことだろう。フリーランスで働いている人は、それぞれの取引先に逐一マイナンバーを提出する手間があったはずだ。それら以外には証券会社などで税金の支払いが発生する取引があると、マイナンバーを求められたはずだ。他には社会保障関連の手続きでも、マイナンバーを求められただろう。
企業側では、従業員から集めたマイナンバーを適切かつ厳重に管理しなければならず、そのために新たなシステムを導入したりマイナンバー管理のためのアウトソーシングサービスを利用したりしている。面倒を強いられているのが税理士さんや社労士さんで、顧問先企業が集めたマイナンバーを扱わざるを得ず、事務所内に分離されたマイナンバー管理スペースを用意するなどの必要に迫られることもあるようだ。
ところでマイナンバーの利用が始まれば、大規模な情報漏洩事故が発生すると予想していた。いざふたを開けてみると、小さな漏洩はあったものの深刻な事故は起きていない。もちろん大きな漏洩事故を期待していたわけではないが、ちょっと肩すかしを受けた気分もある。それだけ企業がしっかりとマイナンバーを管理している結果でもあり、あるいはマイナンバーの利用が厳密に制限されていることで「攻撃者が盗みたい情報」となっていないからかもしれない。
ところで、厳重に取り扱わなければならない「マイナンバー(個人番号)」と、個人番号が記載された「マイナンバーカード」の話題が、相変わらず一緒くたになって発信され少々混乱や誤解が生じている。この状況を危惧してか、内閣官房でも「マイナンバーとマイナンバーカードの違いについての資料」なんてものを公開している。
改めて説明すると、マイナンバーとは日本国内の「全住民」に指定、通知された12桁の番号で、番号法に定められた「社会保障」「税」「災害対策」の3分野の事務手続きに「限って」利用されるものだ。一方のマイナンバーカードは、申請により交付される表面に顔写真が入ったプラスチック製カードで、裏面に個人番号が記載されている。このカード1枚で、個人番号の確認と本人確認が行える。さらにカードにはICチップが内蔵されており、そこには電子的に個人を認証する電子証明書が入っている。この電子証明書を使った個人認証は、民間事業者なども利用できる。ちなみにICチップ内の電子証明書を利用する際に、個人番号が使われるわけではない。
「iPhoneがマイナンバーに対応する」「チケットの確認にマイナンバーを」といったタイトル表現のニュースが流れることがある。これらは個人番号ではなくマイナンバーカードのことだ。12桁の個人番号がiPhoneに入ったりチケットの確認に使われたりするわけではない。
マイナンバーカードを紛失したとしても、それで個人番号が漏れることを特別心配する必要はないだろう。先に述べたように個人番号の利用は制限されているので、番号だけを盗られてもそれを使って個人情報が芋づる式に漏洩したり個人番号でサイトなりに不正ログインできたりはしない。またカード自体には所得情報や世帯情報、医療情報などの特定個人情報に当たるものは記録されてもいない。
とはいえカードのICには個人認証の機能があるので、これを悪用される可能性は残る。カードのICチップの利用は暗証番号で保護されており、一定回数以上暗証番号を間違えればロックされる。なので暗証番号とカードを一緒に管理していなければ、それほど慌てる必要はないだろう。しかしカードを紛失した際には、24時間365日対応のコールセンターがあるのですぐに連絡し適切な対処をしたほうがいい。