SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けに、EnterpriseZine Day、Security Online Day、DataTechという、3つのイベントを開催しております。それぞれ編集部独自の切り口で、業界トレンドや最新事例を網羅。最新の動向を知ることができる場として、好評を得ています。

最新イベントはこちら!

EnterpriseZine Day Special

2024年10月16日(火)オンライン開催

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けの講座「EnterpriseZine Academy」や、すべてのITパーソンに向けた「新エバンジェリスト養成講座」などの講座を企画しています。EnterpriseZine編集部ならではの切り口・企画・講師セレクトで、明日を担うIT人材の育成をミッションに展開しております。

お申し込み受付中!

DB Press

「Azure Cosmos DBは大規模なスケールのゲーム開発者に」―MSバイスプレジデントに訊いた


 数年前から「データは新たな天然資源」といった話題をよく耳にするようになった。新たな資源である大量なデータを、クラウドでも当然ながら扱いたい。そのため各パブリッククラウドベンダーは、最近データベースのPaaSサービスにかなり力を入れている。Microsoftも従来のSQL ServerをベースにしたAzure SQL Databaseに加え、Azure Database for MySQL、Azure Database for PostgreSQLを相次いで発表。さらに、NoSQL型でグローバルレベルに分散したデータベースを運用できる、Azure Cosmos DBの提供も開始した。クラウド&エンタープライズ部門のData Groupを統括するコーポレートバイスプレジデントのジョセフ・シロシュ氏に、最新のSQL Server 2017について、さらにはMicrosoftのデータプラットフォーム戦略について話を訊いた。

SQL ServerはAI搭載の世界初のRDBMS、Cosmos DBは真にグローバルレベルで分散させて利用できるデータベース

マイクロソフト コーポレートバイスプレジデント ジョセフ・シロシュ氏
マイクロソフト コーポレートバイスプレジデント 
ジョセフ・シロシュ氏

Q:資源であるデータを価値に変えるために、MicrosoftはAIをどのように捉えていますか?

シロシュ氏:既に40から50年前にもAIは注目されました。当時はLispやPrologといったAI向けの言語を使い、AIプログラミングを行う技術が中心で、この取り組みはあまり上手くいきませんでした。対して、今注目されているAIはデータから学ぶアプローチで、これは上手くいっています。既にAIがさまざまなアプリケーションで利用されています。

 この現状のAIを可能にしているのが、データ、クラウド、インテリジェンスという3つの要素です。クラウドは膨大なソースから集められるデータを1つにすることができます。クラウドという極めて大きなシステムの中でデータを統合し、そこで分析も可能にしました。AIにとってデータは酸素のようなものです。

 分析に利用するインテリジェンスでは、Deep Learningのような先進的なアルゴリズムが生まれました。これにより大量にあるデータの中を見て、予測し適切なアクションが起こせるようになったのです。この仕組みがクラウドにあって、どこでもデータに対し高度なインテリジェンスを使えるようになったのです。

 既にこのAIの技術を使って、医療分野の大量のデータを分析しています。膨大な数の論文に対し機械学習を行うことで、AIが推奨最適な治療方法を予測して、それを医師に提示する研究も行われています。

Q:新しいAIに対し、Microsoftはどのようにアプローチしていますか?

シロシュ氏:システムにインテリジェンスを提供するために、さまざまなアプローチがあります。そのうちの2つとして、SQL Server 2017にIntelligence DBの機能を加えました。これは、データの存在するところにAIを持って行くものです。従来はアプリケーションのところにAIを入れました。エンタープライズレベルでこれを利用するには、アプリケーション側に高可用性などの機能を待たせる必要があり、かなり複雑な仕組みになってしまいます。

 そこでMicrosoftは、SQL Server 2017でデータの置いてあるデータベースのレイヤにAIを入れることにしました。そうすることで、高可用性やコンプライアンスなどのエンタープライズレベルで利用するのに必要なことをすべてデータベース側に任せることができます。Intelligence DBの機能は、ストアドプロシージャの形で利用できるので、アプリケーションからも容易に利用できます。R、Pythonなどが利用でき、グラフデータベースの表現も可能です。これらで呼び出されたクエリの処理は、データベースの中で最適化され実行されます。

 つまりSQL Server 2017は、世界で最初にAIを積んだリレーショナルデータベースになったのです。そしてこのSQL Server 2017は、WindowsはもちろんLinuxでも、Dockerコンテナでも走らせることができます。また今回新たに発表している「R Server 9.1」は、GPUパワーをフルに利用できSQL ServerだけでなくHadoop Sparkからも利用できます。

 また、さらにより幅広くユーザーがデータを扱えるようにするため、Azure Database for MySQL、Azure Database for PostgreSQLのプレビュー版も発表しました。これにより、Azureという同じプラットフォームの上でさまざまなデータベースのデータを管理できるようになります。

Q:SQL ServerにAIの機能を搭載したことで、具体的にどのようなアプリケーションでAIが利用できるようになるのでしょうか?

シロシュ氏:SQL Serverは世界中の商用データベースの中でも、もっとも利用されているものです。なので、世界中の多くのアプリケーションに、インテリジェンスが加わることになります。それによりトレンド予測や売り上げの予測、不正の検知などが簡単にできるようになります。

 既にERPアプリケーションのMicrosoft DynamicsにもAIの機能は入っていますが、Intelligence DBによりさらに革新的な機能が加わることになります。これからはMicrosoftの提供するあらゆるアプリケーションでAIが利用できるようになるでしょう。

Q:R Server 9.1でGPUが活用できるようになり何が大きく変わりますか?

シロシュ氏:データサイエンティストの人たちが扱うテキスト、イメージ、オーディオといった非構造化データの分析環境が大幅に改善します。これまで処理が重すぎて機械学習ができなかったようなものも、分析対象にできるようになるでしょう。その上で、AIのモデルを作るプログラマーには、慣れているRから利用でき、SQL ServerでもSparkでも、LinuxでもWindowsでも自由に選択できるメリットもあります。

Q:SQL ServerがAI機能を搭載しどんどん便利になると、その独自の拡張機能がユーザーをロックインすることにはなりませんか?

シロシュ氏:機能が拡充することで、さまざまな面で開発者は仕事をやりやすくなります。性能の低いプラットフォームで苦労することがなくなり、信頼性や可用性の確保はSQL Serverが確保してくれ、開発者は苦労から解放されることになります。データに対しAIを活用したい際に、SQL Serverだけが選択肢ではありません。とはいえSQL Serverならば、シンプルにAIを実現できます。その上でエンタープライズレベルのセキュリティやコンプライアンスも用意されているのです。

 そしてMicrosoftでは、マルチプラットフォーム対応やさまざまなアクセス方法を用意しており、開発者は自由に選べるようにしています。

Q:SQL Serverと競合製品の違いは?

シロシュ:SQL Serverは今、かなりユニークに進化しています。競合には、AIを組み込んだリレーショナル・データベースはまだありません。将来的にAIとデータは極めて近い関係になります。これらは同じところに置かれるようになるはずです。データベースはデータを使いどんどん学習して、AIのための「ベース」になっていきます。そうなれば、データベースはたんなるデータの入れ物ではなく、「AIベース」になるでしょう。分析のモデル自体もどんどんデータベースの中に入ってくるはずです。

 従来のデータベースは過去の履歴情報にクエリを投げ、過去を理解するためのものでした。AIが入ったSQL Serverでは、未来を予測でき将来が見えるものになります。

次のページ
真にグローバルレベルで分散したデータベースとして利用できるCosmos DB

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
DB Press連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

EnterpriseZine(エンタープライズジン)
https://enterprisezine.jp/article/detail/9401 2017/06/15 16:43

Job Board

AD

おすすめ

アクセスランキング

アクセスランキング

イベント

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けに、EnterpriseZine Day、Security Online Day、DataTechという、3つのイベントを開催しております。それぞれ編集部独自の切り口で、業界トレンドや最新事例を網羅。最新の動向を知ることができる場として、好評を得ています。

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング