MySQLのプロフェッショナルサービスに特化し、自己資本で設立したPercona
斯波:ピーターさん、まずは読者に向けて簡単に自己紹介をお願いします。
ピーター:ピーター・ツァイツェフ(Peter Zaitsev)です。Percona社の設立者でありCEOです。弊社はMySQLやMariaDB、そしてMongoDBのためのソリューション、サポートおよびプロフェッショナルサービスに特化した会社です。2006年8月に設立したのでもう少しで11年になります。
小幡:ビジネスの調子はどうですか?
ピーター:いいですよ、成長しています。弊社はベンチャーキャピタルからの出資がない自己資金経営なので、楽ではありません。
斯波:ピーターさんの資本はMySQLの知識なのかもしれませんね。
ピーター:私は講演やブログなどMySQLの世界でいくらか有名だったので、それが役に立ちました。
斯波:Perconaを立ち上げた時の背景を教えてください。
ピーター:2005年にオラクルがストレージエンジンInnoDBのInnobaseを買収し、後にMySQLがストレージエンジンのFalconを買収するなどして、MySQL市場が混乱していました。しかし私たちにはチャンスでした。PerconaはInnoDBを素晴らしいと信じていて「オラクルが所有しても関係なく、みなさんのお手伝いをします」と言えたからです。これがPerconaの強みでもあります。
斯波:MariaDBとも親密ですよね。
ピーター:PerconaのカンファレンスにMariaDBを招待したり、MariaDBの進展について私が宣伝することもあります。同様にオラクルもイベントに招待しています。例えば来週にはベルギーで「Percona University」を開催し、オラクルにも講演をしてもらいます。
小幡:PerconaとMariaDBのビジネスモデルはどう違うのでしょうか?
ピーター:MariaDBは製品を提供する会社です。一方、PerconaはMariaDBを私たちの製品として一流のオープンソースデータベースにして収益化しています。
斯波:あらためてPerconaの強みは?
ピーター:MySQLとMongoDBという大きなエコシステムをサポートしているところです。例えばPerconaの「Percona Monitoring and Management(以下、PMM)」も良い製品ですが、認識すべきなのは私たちが異なるタイプのエンジニア集団だということです。既存のオープンソースコンポーネントを組み合わせて連携し、ほかのパートナーとも連携しています。実際に顧客がいるところをカバーしています。
小幡:独自の製品を開発するのはなぜですか?
ピーター:私たちの目的は顧客にサービスを効率的に提供することです。もしユーザーがMySQL Enterprise Monitorを使うならMySQL Enterpriseを購入しなくてはなりません。PMMならその必要はありません。
小幡:しかし想像してみてください。オラクルがPerconaのモニタリングツールやXtraDBの機能をコピーしたとしたら?
ピーター:もちろん可能です。かつてPerconaはInnoDBのモニタリング機能などを開発し、実装しました。その後にオラクルがMySQLに実装したのです。今となってはどこが最初だったか誰も気にしていません。いまMariaDBでも似たようなことが起きています。例えばMariaDBはマルチソースレプリケーションなど多くの機能を先に開発しました。しかし今ではMySQLにもその機能があります。ビジネスとしては確かに厳しいです。独自の機能を開発するために投資したのに、数年したらそれがアドバンテージではなくなっているのですから。
小幡:脆弱性みたいなものでもありますよね。
ピーター:Perconaはそうしたことが起きることを予期して、受け入れています。Perconaの投資の多くはオラクルができてもオープンソースにしないであろう範囲を対象にしています。例えばPercona XtraBackup。オラクルにはMySQL Enterprise Backupがありますが、それをオープンにするのは難しいでしょう。MySQL Enterprise版となりうる範囲で、私たちは機能を開発しています。
小幡:もしオラクルがMySQL Enterprise Monitorをオープンソースにしたら、PMMを葬ることができるでしょうか?
ピーター:できるかもしれませんね。
小幡:やるでしょうか?
ピーター:しないでしょうね。